宝石神殿レベル5

第23話 気まぐれな精霊

 ジュエリーの奉納が終わって宝石神殿がレベル5になった。

 部屋全体の光がおさまると奉納台の上空に小さな姿があった。ダイヤと同じ精霊だとは感覚でわかる。半透明な見た目は、ほっそりとした少女に思えた。


「精霊が出現してうれしい。種類は何?」

「風の中位精霊なの。またメイアが名前をつけて」

 前回はダイヤモンドから命名した。残りの世界4大宝石は、サファイア、エメラルド、ルビーだった。風の精霊からイメージを膨らませた。

「名前はエメよ。エメラルドのような緑色が、さわやかな風にあっている」


 少女の精霊がその場で何度も回転した。

「エメも喜んでいるの」

「すてきな名前です」

 コパリュスとムーンも一緒に喜んでくれた。

 ダイヤはお辞儀で、エメは回転で態度を表現するみたい。


「エメ、これからもよろしく」

 よほどうれしいのか、私の周囲を飛び回りながら回転を繰り返していた。ダイヤは少し離れた位置で浮遊している。賑やかになってうれしかった。


「宝石神殿の情報を確認するの」

 コパリュスが近くにある石のテーブルへ手をのせた。

 画面に宝石神殿の情報が表示された。敷地内の状態をあらわす色はレベル4と同じだった。エメに関連した機能向上が追加されている。


「風が豊かになるらしいけれど、今ひとつイメージが浮かばない。コパリュス、どのような効果なのか教えて」

「心地よい風を届けてくれるの。清々しい気持ちになる以外に、敷地内なら状態異常や病気はなくなるかな」


「健康でいられるのはうれしい。私の宝石スキルを確認したら、宝石神殿の外で風を感じたい。思いっきり深呼吸もしたい」

 コパリュスの確認が終わったあとに、石のテーブルへ手をのせた。宝石採掘がレベル6で、宝石鑑定と宝石加工がレベル5だった。


「同じレベルが続いていますが、もう少しでレベルが上がると思います。メイア様が加工するムーンストーンが楽しみです」

「宝石加工が上がったら、真っ先にムーンストーンのジュエリーを作るね」

「すてきなジュエリーが待ち遠しいです」


 スキルの確認が終わって、コパリュスとムーンをつれて宝石神殿の外へでた。畑へ行くために噴水の横を通ったときだった。

 突如、目の前にエメが出現した。風のように舞ながら私の横で止まった。

「精霊は自由気ままだから、呼ばないと出現しないと思っていた」


「エメはメイアを気に入ったみたいなの。よければ、そのまま浮遊させて」

「私もエメが近くにいるとうれしい。せっかくだから能力をみたい。エメ、私の周辺にある空気をきれいにしてくれる?」

 エメは回転してから私の周囲を飛び回った。エメが通過したあとには銀色の粒子が舞った。銀色の粒子は精霊が影響をあたえた証みたい。


 周囲の空気が澄み切ったように感じた。両手を広げて大きく深呼吸した。

「メイア様、心地よい風が舞っています」

「空気がおいしい。目に見えないのが残念だけれど、エメの能力はすてきよ」

 エメが目の前で止まってから何度も回転した。まるで踊りを見ているみたい。私が歩き出すと、肩辺りに浮きながら一緒についてきた。


 畑に到着した。ガルナモイトさんの指摘を参考に、作物を育てている。コパリュスとムーンと一緒に改善した。以前よりも育ちがよくなった。力仕事が必要なときはトナタイザンさんが手伝ってくれた。

「大きく育っているの。食べられる野菜はあるかな」

「畑の手入れをしたら収穫するね。ダイヤ、土を豊かにして」

 ダイヤが出現してお辞儀した。


 ダイヤが移動して土をさわり始めた。ダイヤがさわった土周辺は、祝福されたように銀色の粒子が舞った。畑全体の土を豊かにすると、ダイヤは私の前でお辞儀して霧が晴れるように消えた。


「美味しそうな野菜を見つけたの。メイア、早く収穫したい」

 コパリュスとムーンと一緒に収穫を始めた。

 エメは私たちを応援するかのように、周囲で舞っていた。

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