第19話 宝石の強化
さきほど3回目の鐘がなった。宝石神殿の地下1階で宝石強化の準備中だった。強化する宝石は宝石加工スキル上限のオパールに決めた。『宝石箱』と念じたあとに宝石図鑑をとりだした。強化方法を確認すると気になる点があった。
「宝石の強化は椿油と思っていた。でもオパールには精霊の炎も必要みたい。どのような炎か知っている?」
前に宝石図鑑で確認したときは、地金は黒魔石で宝石は椿油だと載っていた。
「宝石のレベルで必要な材料も変化するの。レベル5からは精霊の炎が必要かな。それ以降のレベルは、メイア自身で確認したほうが楽しめると思う」
コパリュスの言う通りかもしれない。私の知らない宝石知識が、新たに分かるのは喜びでもある。今後の楽しみはあるけれど目先の問題があった。
「レベルアップの楽しみが増えた。でも今は精霊の炎よ。どこで入手できるの?」
「探す必要はないと思います。メイア様はすでに持っています」
予想外の答えがムーンから返ってきた。初めて聞いた精霊の炎を私が持っているみたい。でも記憶はなかった。
難しい顔をしていたみたい。コパリュスが私の顔を覗き込んできた。
「コパからの贈り物を忘れたの?」
オパリュス様に頂いた贈り物を思い出した。宝石箱や宝石図鑑は違う。宝石道具の種類で炎をあつかう道具があった。
「宝石加工で使う火の魔石具?」
「その通りなの」
「そういえば料理で使う火の魔石具に比べて、宝石加工の火の魔石具は炎の感じが違っていた。もしかして、この炎が精霊の炎なの?」
「精霊の影響があると銀色の粒子が舞うの。コパやムーちゃんなら感覚で分かるけれど、メイアでも見た目で判断できるかな」
「宝石加工で使う水の魔石具、銀色の星空に思えたのも同じ理由ね」
普通の炎や水と思っていたけれど、実際は精霊が関与していた。この世界らしい現象で興味のある内容だった。まだまだ私の知らない宝石が私を待っていそう。
「ダイヤの行動でも銀色の粒子が舞うの」
「土を豊かにするダイヤを注意深く見てみるね。宝石の強化材料が異なるのなら地金も可能性があるよね。ミスリルを確認したい」
宝石図鑑でミスリルを確認した。強化は黒魔石ではなくて赤魔石が必要だった。たしか強い魔物が落とす魔石と聞いた。
「赤魔石なら、あとで取ってくるの」
「ミスリルはまだ先だけれど、事前に赤魔石があると助かる。お願いするね」
「わたくしも赤魔石を集めてきます」
「レベル6の準備は平気そうね。精霊の炎があったからオパールの強化を始める。どのように強化されるのか楽しみ」
宝石箱から宝石加工の道具を取り出した。近くに宝石図鑑をおいて、注意点を確認する。強化方法は簡単みたい。椿油に宝石を入れて精霊の炎で熱するだけだった。ただ温度管理が重要みたいで、宝石加工スキルの出番だった。
オパールのルースは手元に数多くあるから、失敗を恐れずにためせる。ひとつのルースを椿油の中へいれて、注意点を守りながら開始した。適正な炎の温度はスキルが補ってくれた。スキルの偉大さを感じながら宝石の強化ができた。
椿油からとりだしてコパリュスとムーンにみせた。となりに強化前のオパールをおいた。明らかに違いがわかった。
「強化したオパールはかがやきがすごいの。色合いも濃くなっている」
「明るさが増しています。強度も上がっているのでしょうか」
コパリュスもムーンも強化したルースを喜んでくれた。
「ここまで見た目が異なれば宝石強化は有効ね。強度の比較はむずかしいけれど、表面はきれいになっている」
椿油が表面に染み込んで、微少な傷を塞いでくれたみたい。
「すべてのルースを強化するのですか」
ムーンからの質問だった。
「ルース自体がきれいなら、そのままの状態で残したい。無処理でかがやきがすごければ、ジュリーの希少性が増すと思っている」
「天然の状態を残すのも、すばらしいと思います」
「コパはどちらでも平気なの。メイアの好きに宝石やジュエリーを作ってほしい」
肯定的に受け止めてもらえてうれしかった。一般的に宝石は、美しくて希少性があって、耐久性がある鉱物を示すみたい。宝石強化は美しくなって耐久性も上がると思う。でも天然ならではの美しさもあると思っている。
「宝石強化方法がわかったから、ルースを選別して実施する。これだけきれいな宝石ができれば、シストメアちゃんも喜びそう」
「誰でも魅了される、かがやきだと思います」
「たくさん奉納してから、シストメアちゃんやトナタイザンさん用を作ってみる。もちろんコパリュスやムーンも、ほしいジュエリーがあれば教えてね」
コパリュスとムーンの好みを聞きながら、ルースの選別をおこなった。4回目の鐘が鳴るころには、オパールとスフェーンの選別が終わった。その日は宝石強化をいろいろと試してみた。
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