第13話 色が遊ぶ宝石
ここ何日かは椿の木を育てながら、鉱物採掘とジュエリー加工をくりかえした。採掘や加工になれてきて、1日に仕事できる量がふえた。
ひとつ上のレベルにある宝石加工が連続して成功した。昼食をとったあとに、コパリュスとムーンをつれて宝石神殿の5階へきた。
5階の部屋に入るとダイヤが姿をみせてくれた。この場所ではダイヤを呼ばなくても、出現してくれることがわかった。
「宝石関連スキルのレベルを確認するね」
私の情報がわかる石のテーブルへ手をのせた。
「メイアのレベルがすぐ上がってすごいの」
「宝石採掘と宝石加工がレベル5で宝石鑑定がレベル4。思っていた通りのレベルで安心した。レベルアップが早い理由は、なんとなく想像ができてきた」
コパリュスもムーンも、私のレベルアップ早さには驚いている。いろいろと考えてみると、いくつか理由が思い浮かんだ。
「どのような理由ですか。宝石に愛されているのでしょうか。メイア様の宝石にたいする熱意も影響していると思います」
ムーンの考えに同意する部分もあった。
「ある意味では宝石に愛されていると思う。オパリュス様から頂いた贈り物のおかげで、効率よく採掘や加工ができている。それに宝石神殿がすごい。すべての鉱物を採掘できる場所は、通常ではあり得ないはずよ」
「品物があっても、使いこなせない種族も多いです。メイア様の生み出すジュエリーは独特の美しさがあります」
「ほめてくれてうれしい。元の世界にあるジュエリーは、この世界とは異なるデザインや技法があるから、新鮮に映るのかもしれない」
発想があっても、実現させる技術がないとジュエリーは作れない。でも私には宝石加工スキルがあった。運がよかったと思う。
「メイアのジュエリーは高品質が多くてすごいの。高品質を多く作れば、スキルも早く上がる。それも影響しているかな」
「失敗が少なくて高品質が作れるのも大きい。でももうひとつ理由があるのよ」
「それは何なの?」
コパリュスが腕をとって聞いてきた。ムーンも理由を知りたいみたい。私に視線をむけている。ダイヤはマイペースなのか、部屋の中を浮きながら移動していた。
「費用の問題よ。採掘では採掘場所をさがす費用、加工では鉱物を入手する必要が発生する。もちろん道具にかける費用や生活費もある。鉱物やジュエリーが売れなければ採掘や加工もできない。私のように集中してできないのよ」
「たしかにメイアは、毎日ずっと採掘と加工をくりかえしている。だからレベルが上がるのが早いのかな」
「いろいろな要因があると思うけれど、費用はその要因のひとつだと思う。私にはオパリュス様から頂いたスキルや贈り物がある。コパリュスとムーンがいるから、生活を気にせず宝石に集中できる。コパリュスとムーン、いつもありがとう」
あらためて、お礼の気持ちをのべた。ほかと交流せずに生活できるのは、コパリュスとムーンのおかげだった。
「メイアがきたから、宝石神殿がレベル2以上になったの。お礼を言いたいのはコパのほうなの。メイアには感謝している」
やさしいコパリュスの顔があった。頭をなでると笑顔にかわった。愛らしいコパリュスがいるだけでも癒やされた。
「わたくしもメイア様と過ごせてうれしいです。今までにみたことのないジュエリーは心が躍ります。すてきな宝石も、かがやきを楽しませてくれます」
ムーンが近くによってきた。フサフサでモフモフの毛並みをなでた。ムーンの温かさが伝わってきた。ムーンも気持ちよさそうに尻尾をふっている。
いつの間にか、ダイヤも近くにきて漂っていた。
「ダイヤも土を豊かにしてくれてありがとう」
空中に浮きながら、ダイヤがお辞儀をしてくれた。
しばらくの間、この暖かい空間を堪能した。フサフサでモフモフにうもれて、少し眠ったみたい。目を覚ますと近くにコパリュスの寝顔があった。コパリュスも一緒にムーンの体で休んだみたい。
「うたた寝したけれど、ムーンは大丈夫だった?」
「平気です。メイア様の嬉しそうな顔が見られました。ところでレベル5の宝石は何が採掘されたのでしょうか」
「コパも知りたいの」
コパリュスも起きたみたい。姿勢を正して『宝石箱』と念じた。出現させた宝石箱から宝石図鑑をとりだした。
「主役になれる宝石はオパールとスフェーンね。まずはオパールをみせるね」
オパールの頁をひらいた。半透明な白乳色のオパールがむかえてくれた。代表的なホワイトオパールの絵だった。ほかにも赤色が鮮やかな絵もあった。
「七色にかがやいていて、きれいな宝石なの」
「遊色効果といわれるオパール独特のかがやきよ。実際の宝石なら、もっと色の変化が楽しめる」
「ジュエリーになった姿も楽しみです」
「オパールは水分を含んでいて、柔らかい鉱物だから加工がむずかしい。カットによって遊色効果も変化するから、たいへんみたい。でも宝石加工スキルがあれば、きれいなルース状態をみせられると思う」
宝石図鑑にも水分の記載があった。加工がむずかしいと書き込みにもあった。やっぱり元の世界とこの世界の宝石は、同じ性質があるみたい。
「内部に水があるとはめずらしいです」
「コパは早く実際のオパールがみたいの」
「私も加工後のオパールに興味がある。さっそく地下1階で加工するね」
コパリュスとムーンをつれて移動した。
その日はルースをたくさん作って、オパールとスフェーンのプラチナジュエリーを数多く完成させた。
ルースと素材が準備できれば、1時間に何個もジュエリーが作れてしまう。元の世界での早さは不明だけれど、スキルの恩恵は偉大だと感じた。宝石神殿の5階へいって、一部のジュエリーを残して奉納した。
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