第11話 強化された地金

 ムジェの森へ出かけてから何日か経過した。椿の木は枯れずに育ってくれた。土の精霊による加護で土が豊かだと、コパリュスに教わった。園芸経験のない私にはうれしい知らせだった。空気がおいしいのも風の精霊による加護があるみたい。


 今は地下2階で採掘をしていた。

「フローライトとプラチナが確実に掘れたみたい。レベルを確認したら、加工を始める。これでプラチナジュエリーが作れる」

 レベル4の鉱物が、何回か連続で採掘できた。


「メイア様の新作ジュエリーが楽しみです」

「コパも早くみてみたいの」

「鉱物を地下1階へ運んだから、5階へ行ってレベルを確認する。昼食をとったら加工に挑戦する」


 4時間近く採掘していたので大量の鉱物がとれた。みんなで手分けして運んだ。

 宝石神殿の5階へ向かった。移動途中でお昼を合図する鐘がなった。5階に到着すると、スキル状態がわかる石のテーブルへ手をのせた。


「メイアのスキルは上がっていた?」

「宝石採掘と宝石加工がレベル4よ。宝石鑑定はレベル3ね。鑑定はスキルを使う回数が少ないから、レベルも低いのかもしれない」


「短い期間でレベルが上がっています。ふつうよりも早くてすごいです」

「ほめてくれてうれしい」

 近くにいるムーンをなでた。うれしそうな顔になった。最近は慣れてきてムーンが喜んでいるのを感覚でわかった。私もモフモフとフサフサを堪能できてうれしい。

 私のレベルが早く上がるのには理由があるはず。少し考えてみたい。


「コパもメイアが凄いと知っているの」

「コパリュスもありがとうね」

 コパリュスは甘えん坊になるときがある。解決方法もわかっていた。頭をやさしくなでてあげた。目を細めて笑顔になった。コパリュスには笑顔が似合っている。


「今回の新作はフローライトとプラチナを使うのでしょうか」

「そのつもり。とくにプラチナは強化してみたい」

「コパはお腹が空いたの」

「この前とってきた食材もあるから、お昼は豪華にするね」


 4階へ移動して料理を開始した。

 ムジェの森にある食材での料理にもなれた。手持ちの食材で作った料理は満足のいく内容だった。最初はムーンの食事に迷ったけれど、私たちと同じで平気みたい。


「メイアの料理はいつもおいしいの」

「ムジェの森にある食材だけで作ったとは思えません。ほかの食材が増えれば、もっとおいしくなるのでしょうか」


「料理の種類が増えて、味にも変化をだせるよ。宝石神殿の敷地は広大だから、いろいろな食材を育ててみたい。空いている敷地は好きに使って平気?」

 農業経験はないけれど、いろいろと試して米や小麦を入手したい。失敗しても減るものはなかった。調味料や香辛料で味の幅も広げたかった。

「自由に使ってかまわないの。コパもおいしい料理が食べられればうれしい」


「米や小麦、野菜や果物も作りたい。家畜が飼えればミルクや卵も手にはいる。宝石に囲まれた毎日もうれしいけれど、コパリュスとムーンとの食事も楽しみたい」

 食事が充実できれば、すてきな日常がおくれる。この世界の食材を教えてもらいながら、楽しい食事の時間をすごした。


 コパリュスとムーンを連れて、宝石神殿の地下1階にきた。これからレベル4の鉱物を使ったジュエリーを作る。椿油がないので宝石強化は無理だけれど、プラチナ強化だけでもうれしかった。


「どのようなデザインを予定していますか」

「花のデザインにするつもり。フローライトは色の種類が多いから、色鮮やかな花が作れる。花束にしても面白そう」

「楽しみです」


「最初は地金作りからはじめる。危ないから少し離れていてね」

 宝石箱から加工用の道具をとりだした。元の世界ではプラチナの強度を増すにはパラジウムを使っていた。この世界は黒魔石で強化するみたい。


 宝石図鑑の知識と宝石加工スキルのおかげで、初めてのプラチナ強化は失敗せずに作業が進んだ。地金作りが終わるとフローライトのルースを作った。完成した地金とルースをテーブルにおいた。


「すてきな色ばかりの宝石できれいなの」

「色だけではなくて、大きさやカットも何種類か用意したよ。コパリュスやムーンの気に入るジュエリーが作れると思う。楽しみにしていてね」

「出来上がりが待ち遠しいの」

「わたくしも楽しみです」

「さっそくジュエリー作成にとりかかるね」


 別の道具を宝石箱からとりだした。フローライトもロードクロサイトと同じで壊れやすい。宝石加工スキルで危険回避できるけれど無理は禁物だった。

 時間をかけて、じっくりゆっくりとジュエリーを作る。最後に宝石神殿マークを刻印して完成となる。


 30個以上のジュエリーができた。リング、ネックレス、ブレスレット、イヤリングとジュエリーの種類も増やした。パリュールと呼ばれる、同じ宝石やデザインで作られたセットも用意した。


「芸術品と呼びたいくらいすてきです」

「どれもきれいなジュエリーなの。全部を宝石神殿へ奉納してくれるの?」

「コパリュスとムーンが喜んでくれてうれしい。初めてのパリュールよ。ぜひとも奉納したい。きっとオパリュス様も喜ぶと思う」

「楽しみなの。早く5階へ行きたい」

 コパリュスが私の手をとった。


 ジュエリーを宝石箱へしまって、宝石神殿の5階へ向かった。オパリュス様の像におじぎして、手前の奉納台へ作ったジュエリーをおいた。

 淡い光とともにジュエリーが消えて、部屋全体に光が充満した。この現象には経験がある。宝石神殿がレベル3になった証だった。

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