第9話 新しい鉱物

 翌朝、オパリュス様へのお祈りを終えてから、宝石神殿の地下2階にきた。もちろん横にはコパリュスとムーンがいる。

「昨日は聞き忘れたけれど、ダイヤモンドは幻なのよね。王族や貴族はどのような宝石を使っているの? それともジュエリーを身につける習慣がないの?」


「ジュエリーは権力の象徴や華もあるから、男女を問わずに着飾っているの。国宝級ジュエリーはルビーかサファイアで、地金がオリハルコンかな。宝石加工スキルが達人レベルにならないと作るのが難しいの」


 ふたつの宝石とも鉱物名が同じコランダムだった。色違いで名前が異なる面白い宝石でもあった。

「オリハルコンはアダマンタイトと同じで、実物を見ていない鉱物ね」

「メイア様の世界には、ふたつの鉱物は存在していないのですか」


「ゲームなどの空想世界で使われていた鉱物よ。同じような鉱物かどうかは、鑑定して確認してみるつもり。ルビーやサファイアが国宝級なら、通常はエメラルドをジュエリーにしているの?」

 ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドが世界4大宝石だった。この世界も同じなら、エメラルドも高級宝石と思った。


「エメラルドやガーネットなどのレベル7鉱物は、高級ジュエリーかな。地金はミスリルが多くて、普通の貴族が身につけているの」

「王族は異なるの?」

「実質的な最高級はトパーズやスピネルを使ったジュエリーで、達人にちかい一流以上でないと作れないかな。王族や位の高い貴族が争って着飾っているの」


 宝石は元の世界で聞いた名前ばかりだった。ただ価値観は異なりそう。コパリュスやムーンに聞いて、鑑定もしながら把握する必要があるみたい。

「いろいろと勉強になった。スキルレベルは低いからレベルアップを目指すね。レベルが高い宝石や地金なら、宝石神殿のレベルアップも早くなる?」


「高レベルや高品質ジュエリーなら早くなるの。でもメイアのペースで平気」

「楽しみながらがんばるね。宝石採掘がレベル3になったから、少しだけレベル4の鉱物が採掘できる。どのような鉱物なのか興味津々よ」

「わたくしも楽しみです」


「さっそく採掘をはじめるね」

「今日は近くでみているの」

 『宝石箱』と念じて、出現した宝石箱からツルハシをとりだした。最初は戸惑ったけれど、宝石箱の中身をとりだす方法にもなれてきた。


 部屋の中央へ移動した。

「この場所ですべての鉱物を採掘できるのよね」

「その通りなの。メイアは神の加護もあるから、時間をかければ可能なの」


「メイア様の宝石図鑑も充実します」

「宝石図鑑は見応えがありそう。目標ができてうれしい」

「わたくしも宝石の詳細が楽しみです」


 視線を地面へとむけた。レベル3までの鉱物はなんとなく採掘場所がわかった。

 ゴールドがありそうな場所へ、ツルハシを振り下ろした。非力な私でも疲れずに何度も採掘できる。オパリュス様から頂いた宝石道具は優秀だった。

 コパリュスは私の近くで採掘を眺めていた。ムーンは少し遠くからだった。ぶつからないか気になったけれど、コパリュスは私の動きを予測してよけていた。


 夢中になって鉱物を採掘した。知らない鉱物が少しだけ混じっていた。宝石鑑定すると、フローライトとプラチナだった。

「レベル4の鉱物が、わずかだけれどとれたみたい」

 ちょうど3回目の鐘がなった。もう9時になったのね。2時間以上も採掘していた計算になる。でも宝石相手なら苦にならない。


「何の鉱物なの?」

 コパリュスとムーンが近寄ってきた。

「フローライトとプラチナよ」

「宝石になった姿をみてみたいです」


「ムーンも宝石に興味があるみたいでうれしい。宝石図鑑でみせるね」

 宝石図鑑をとりだして開いた。フローライトの頁には、宝石の絵がたくさん載っていた。青や緑、紫から黄色まで色とりどりだった。無色透明な絵もあった。


「目移りするくらい多くの色があります。どの色も光沢があってすてきです」

「プラチナと一緒に作れば、色鮮やかなジュエリーになりそう。でもロードクロサイトと同じで壊れやすい。そろそろ強化もためしたい」


「黒魔石と椿油ですか」

 ムーンが聞いてきた。

「プラチナは黒魔石でフローライトは椿油を使う。ムジェの森にあるのよね?」

「コパがとってくるの」

「宝石神殿もレベル2になったし、私もムジェの森へ行きたい。危険もあるけれど一度は敷地の外をみたい」


 オパリュス様の消滅は当分なくなった。宝石に囲まれた毎日は充実している。この世界を楽しめればもっとうれしい。

「凶暴な魔物もいますが、メイア様はわたくしが守ります」

「みんなで行こうね」

「コパは今からでも行けるの。メイアの都合はどうなのかな」


「今日は採掘したレベル3鉱物をジュエリーにして奉納したい。ムジェの森へは明日の朝から行きたい」

 コパリュスとムーンも明日で了解してくれた。

 明日を楽しみにしながら、採掘した鉱物をもってすぐ横の泉へ移動した。泉の水を使って、ジュエリーに必要な鉱物のみにする選別作業を開始した。

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