第4話 女神様からの贈り物
4階は私たち専用で、キッチンから寝室まで全てがそろっている。2階と3階は来客用で、今は誰もいなかった。
キッチンに到着して昼食の中身を考えた。
「手持ちの食材で作るね。宝石箱の中身を確認する」
心の中で『宝石箱』と念じた。宝石箱がテーブルの上に出現した。両手に乗るくらいで、赤色の四角い箱だった。表面にある模様が高級感をかもしだしている。
ふたを開けて念じると、頭の中に収納した品物が浮かんだ。
近くに手のひらを持っていく。とりだしたい食材を念じると、手のひらにウサギのお肉があらわれた。コパリュスがムジェの森で採ってきてくれた食材だった。ほかの食材も一緒にとりだした。
「オパリュス様に頂いた宝石箱は便利ね。何でも入るし時間も停止するから、生ものも安心して入れられる」
「収納アイテムは少なからず出回っているけれど、容量無限で時間停止は非常に珍しいの。誰かにみせるときは注意してほしいかな」
「気をつけるね。ウサギのお肉は夕食に使いたいから、キノコと山菜が中心よ」
食材が決まった。サツマイモやジャガイモに似た芋類は主食として使う。
「コパも手伝う」
「食材洗いをおねがいね。炒め物は私が担当する」
ムーンが
「取ってきてくれてありがとう。ムーンは器用ね。たしか水色が水の魔石具で、赤色が火の魔石具よね」
「そのとおりです。通常の魔石は黒色ですが魔石具を作る段階で着色します。魔石は元の色から黒魔石や赤魔石と表現します。魔石具の色と元々の魔石となる色は、必ずしも一致しないので注意が必要です」
「コパが魔力を充填しておいたから、好きなだけ使えるの」
魔石具は内部に蓄えた魔力を消費してつかう。定期的に魔力補充が必要だった。
「私には魔力がないから助かる。さっそく料理を作るね」
「完成する料理が楽しみです」
火の魔石具に手をかざして『炎』と念じると炎が出現した。今はムジェの森にある恵みしかない。敷地内は広いから畑を作って、家畜も飼ってみたい。
コパリュスが洗ってくれた食材を使って、炒め物を作り始めた。
「今見ている炎は宝石加工で使う炎と何か異なるみたい。それとも気のせい?」
「メイアの記憶が正しいの。種類の異なる炎かな。食材が洗い終わった」
「やっぱり炎の種類が違うのね。炒め物を始める」
コパリュスとムーンが手伝ってくれたので、早めに料理が完成した。みんなで楽しく食事の時間を過ごした。
「メイアの料理はおいしかったの」
「何度食べてもすてきな料理でした」
食後の片付けもおわって、テーブルを囲んで休んでいた。
「喜んでくれてうれしい。ジュエリーもがんばるね」
「どのようなジュエリーを作るの?」
「加工がレベル3になったら、ロードクロサイトを使う予定よ」
「ロードクロサイトとはどのような宝石でしょうか。わたくしは宝石に詳しくないので知りたいです」
ムーンが足元へ移動してきた。手を伸ばして、つやのある毛並みをなでた。フサフサでモフモフな感じが好きだった。ムーンの表情がやさしい感じに思えた。尻尾も振っていて、なでられてうれしいみたい。
「実物はないから宝石図鑑でみせるね。オパリュス様に頂いた宝石図鑑も便利。宝石道具とあわせて3つも頂けてうれしい」
「消滅が回避できれば安い贈り物なの。贈り物は壊れなくてメイアしか使えない。メイアから離れない。だから安心して使ってほしい。それにコパはメイアを気に入っている。メイアの楽しい姿がみられれば、コパもうれしくなるの」
「私もコパリュスとムーンと一緒でうれしい。オリュパス様から頂いた贈り物も、私のみ使用可能なのもすてきよ」
贈り物は私から離れないから、盗まれる心配もない。大事な贈り物をなくす心配がないのもうれしかった。
「贈り物の魔石具も特別で、魔力の補充は必要ないの」
「魔力がない私にはうれしい。宝石図鑑をだすね」
オパリュス様に頂いた贈り物は全て宝石箱に入れてある。心の中で『宝石箱』と念じた。あらわれた宝石箱をテーブルの上において、今度は『宝石図鑑』と念じた。
分厚い辞書にみえる宝石図鑑だった。表紙は色とりどりの宝石が描かれている。手に取ると思いのほか軽かった。ロードクロサイトの頁を開いた。宝石の絵以外に説明文もあって、加工の注意点も知ることができた。
「きれいなピンク色の宝石です。やさしい色合いにみえます」
ムーンが宝石図鑑を覗き込んでいた。
「ルビーみたいな力強さはない赤系統だけれど、心を和ませる色よね。壊れやすい宝石だから、加工が100%の成功になってから作りたい」
「楽しみなの。宝石の強化方法も書いてあるけれど、メイアは実施しないの?」
鉱物を強化する方法が載っていた。地金として使うシルバーやゴールドは、黒魔石で強化できた。ロードクロサイトなどの宝石は、椿油で強化できるみたい。
元の世界にある椿は日本原産と聞いた覚えがある。この世界は王族などの中世ヨーロッパの雰囲気だけれど、まるっきり同じではないみたい。日本食に重要な米も入手できるかもしれない。
「強化をしたいけれど、まずは黒魔石や椿油の入手からよ」
「ムジェの森なら両方とも手に入ると思うの」
「近くにあってうれしい。宝石神殿がレベル2になったら連れて行ってね」
「いつでも案内するの」
「わたくしも一緒にお供します」
コパリュスとムーンと一緒にムジェの森へ行く。楽しみができた。
「はやくレベル2にするね。お腹を満たしたから、採掘と加工をはじめる」
コパリュスとムーンをつれて地下2階に向かった。日が落ちるまで、採掘と加工をくりかえした。少しずつだけれどレベルアップが近づいた。
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