土曜の朝食はバイキングだ
「今日は土曜日、会社は休み!」
と言いたいところだけど朝からやる事は沢山ある。
部屋の掃除もさることながら、その前にみんなの朝食を作らなくてはならない。
プライベートの時間なんてほとんど無いに等しいんだ。
住み込みはこれだから大変なんだよな……とかなんとか言って思いっきり楽しんでるけどね。
俺の役目は料理担当、
これが結構大変なのさぁ〜と言いながらも
平日の朝食は同じ物でも構わないんだけど、晩飯は一ヶ月、毎日違うおかずって決まってんるんだ。
車中で耕介を待っている間に料理本見て洋食にするか和食にするかって考えて考えて、バランス良く栄養満点の週間メニュー表を作ってる。
ああでもないこうでもないって感じで独り言が増えた。
耕介が出張とか会社回りをしない時、俺は事務所で待機していないといけないんだけど許可を取って買い出しにも行ったりしている。
俺はめちゃくちゃ料理を作るのが好きなんだ。食べるより作る方が好き、食べてる人の
俺ってずっと
毎日、おじさんが『美味しい美味しい』って食べてくれて、その喜ぶ顔を見るのが好きだったんだ。
それが俺の役目というか料理を作る事で遠慮なくそこに居られるって思ってた様な気がする。考えて見ればあの頃、よく頑張ってたなって自分を褒めてやりたい!
そんな風に毎日ご飯を作ってたら料理も上手くできる様になって、叔母に調理師の資格を取得するよう促されたんだ。
送迎バスの運転手をしながら空いてる時間は子供達の給食やおやつを作ってた。
そして今は耕介のために料理を作る。もちろんみんなの分もね。
俺の作る料理をすごく美味しそうに食ってくれるから、その顔が見たくていろいろ創作料理も作ってる。
変わった料理を作って出したとするでしょ。耕介は『これ食えるのか』なんて疑心暗鬼になりながらも食ってくれる。その時の耕介の
あっ!そうそう食事係はもう二人いるんだった。一応紹介しとこうか、
ひとりは
もう一人は昼食担当の
会社は土、日、完全週休二日制だけど、耕介は必ず朝飯を食う人だから必ず作らなくちゃならない。
それに伴い
梧平は昭和生まれのおっさんだから、しっかり朝からドッカと食いやがる。
昭和生まれは関係ないか……。
食べる事が好きで、すっごく味に五月蝿いんだ。
『朝食、食べなきゃ始まらねえんだよ』とか言う女がいる。
その女の名は、門倉さをり、早朝から十キロも走って戻ってくると朝風呂浸かって、朝からしっかり食いやがる。
一応、
この女と関わって生きるのは面倒だなって思うけれど
こんな土曜日の朝は絶対に寝坊なんてできない。八時には完璧に朝食の準備を完了させてないと駄目なんだ。責任重大なんだよ。
今朝は洋食にした。
スクランブルエッグ、ウインナー、昨夜多めに作っておいた、ポテトサラダ、野菜サラダ、生ハム、チーズ、トマト薄切り、できればワンプレートで終わらせたい。
なるべく食器は使わない。
何故なら洗い物を減らしたいから〜。
ドレッシングは市販のオニオン、フレンチ、シーザー、胡麻、レモンの五種類と耕介好みの手作り野菜ドレッシングをテーブルに並べて置く、あっ!忘れちゃならないマヨネーズと塩、どれでも好きなの使ってくださいな。
トーストは食べたい奴が自分で焼く、だけど梧平は必ず最初トーストを食うからオーブントースターに入れてタイマーを四分にセット。四分後にはこんがり焼き上がってるぞ。
フレンチトースト、卵サンド、ビザトースト、フランスパンみんな好きなの食ってくれ、
「朝から、超ぉ!頑張ったぜ」
ドリンクは牛乳、オレンジジュース、トマトジュース、多種のティーパックセット、
まるでホテルのバイキングみたいにセッティング、みんなこのバイキング形式が好きなんだよね。
こういうのもたまにはいいんだよ。旅先のホテルのモーニングみたいな錯覚を起こす。
起こさせるんだ。
「そういえば、みんながここに越してきてから一度も旅行なんて行ってない。また何処か行きたいな〜」
そろそろだな。
時計の針を見るとぴったり八時全員集合!みんながダイニングにやって来た。
キッチンは本格的厨房設備が整っている。昔の名残みたい。
その昔お手伝いさんやコックさんがいたんだって、めっちゃ金持ちやん!って金持ちなんだよ。
耕介は超ぼんぼんなんだから。
ダイニングルームと厨房は壁で隔てあり、壁に長方形の窓枠を抜き取って、そこから料理を出してテーブルに並べるんだ。
土曜日の朝は、ほとんどバイキング形式にしてる。本当は窓枠の向こうのカウンターに置いときたいんだけど、みんないちいち歩くのが面倒だからってテーブルの中央に置く事になった。
「みんないいか!合唱」
「「いただきます」」 斉唱
こうして週末の一日が始まる。
耕介が料理を皿に取り盛ると梧平、陸人、京仁、さやか、利喜、翔、そして俺と順に皿に盛って食べる。
一応これも歳の順って決まっているの、俺はシェフだから最後だよ。
斉唱を済ませると梧平はトースターの中からパンを取り出してコーヒー味のマーガリンを塗っている。ちゃんと苺ジャムやブルーベリージャムや蜂蜜など取り揃えている。
「耕介さん、今日の予定は」
土曜日の食事開始時、京仁は必ずこれを訊く、
「そうだな……どうするかな。
と、これもまた毎回恒例で必ず最初に訊かれる。訊かれる事がわかっているのにも関わらず口の中にめいいっぱいトーストを詰め込むんだ。
声をかけられた途端。ほらね。喉に詰まらせてるし、これも恒例なんだ。
もう慣れっこだけど……。
牛乳をごくごく飲んでトーストを流し込み、
「……パチンコ」
訊かなくてもわかる返事、なのに耕介は
訊くんだもんな。
「あたいは掃除して、ジムに行って、本屋に寄って親友と昼飯食って映画を観て晩飯食ってカラオケに行って来る。
うんうんと頷く俺を睨み見るさをり……怖ぇ〜。
「俺は未定です」
訊かれる前に応えたのは
「僕は部屋と一階の掃除をして本屋に行って帰りに図書館へ寄ってきます」
と、
「翔よぉ。お前よぉ。図書館って子供じゃあるまいし、もっとこう華やかなところとか行ってこいや」
相変わらず同じ事を言う梧平に、
「華やかってどこ?図書館最高!でしょ」
相変わらず真面目な顔して図書館の良さを毎度訴えるもんだから、皆してしらっとした顔つきで一斉にグラスを持ってドリンクを飲んだ。
一緒に暮らすという事は癖も似てくるもんなんだと俺はいつも感心している。
この時ばかりはこの人たちって、本当は血が繋がってるってんじゃねぇのって思ったりする。
もしかしたらその昔、輪廻する前は兄弟だったのかも知らないと
現実は真っ赤な真っ赤な赤の他人の集まりなんどけどね。
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