第4話
その日は、土日の夕方くらいだったか。夫婦喧嘩がまた始まった。普段?であれば、夫婦喧嘩の次の日に母親に連れられて、電車で一時間程先にある祖母の家へ行くような形であったが、その日は、母親が泣きながら誰かに電話していた。その様子を父親は、「小姑が」等騒いでいる様子が少しボヤけるが印象に残っている。
その後から、母親に手を引かれ、一緒に家を出ようと言われたが、父親にその手を引き剥がされ、部屋の奥にある寝室に僕は押し込められた。
母親は、必死に僕のことを連れて行こうとするけれども、部屋の間に立った父に突き飛ばされて、それを何度も繰り返していた。
母が、「一緒に行こう。」と言われる度に、部屋の奥に居た僕は、布団に入って、震えながら胸が締めつけられていた。
どれくらいの時間が経ったのかはわからないが、しばらくすると祖母が家にきた。
祖母は、父親と何か話した後、母親と同じように僕のことを連れ出そうとした。母親と二人掛かりだったので、母親は寝室側に入ってきた。
母親に「行くよ」と、抱っこされて連れ出そうとしてくれたが、やはり父親に引き剥がされ、母親は突き飛ばされた。
僕は本当に怖かった。僕のせいで母親が傷つけられているのが辛かった。早くこの状態が終わってほしかった。神様に心の中で仲直りさせてとお願いし続けた。
そして、気付くと、祖母が父親の足にしがみつき、僕のブロックを作るときに使う玩具のハンマーで父親の足を何度も何度も叩きながら、僕を返すよう叫んでいた。
次の瞬間、祖母は、父親に蹴られて横たわった。
本当に地獄のような光景だった。
僕は、今まで一言もしゃべらなかったが、泣きながら「もう大丈夫だから帰って」「僕はここで寝る」とか叫んだと思う。
その後、どうなったのかは実はあまり覚えていなくて、たぶん本当に寝たんだと思う。
実は、僕は能天気な性格で、こういった強烈な記憶でも、確かに思い出そうと思えばかなり鮮明に蘇ってくるが、トラウマのように何かの拍子で思い出すということはあまりない。
本能的に脳ミソの奥にしまいこんでいるのか。良くパチンコで、当たったことはよく覚えているけれど、負けた時のことはなかなか思い出せないのと同じなのかな。
ただ、心も幼かったからなのか、僕の中で一皮剥けるような体験だったんじゃないかと思っている。
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