(12)
白ジャージの「燃えよデブゴン」は、厳島沖にある「NEO Tokyo site02」の内、通称「渋谷区」の自警団「原宿Heads」の2次団体「チームVictory&Jewel」のリーダーであるMC富三郎(もちろん、作家のペンネームや芸能人の芸名やヤクザの「渡世名」みてえなモノで、本名じゃねえ)。
黒装束の忍者もどきは、通称「新宿区」の自警団「四谷百人組」のこれまた2次団体「甲賀組」の副組頭・藤井詩織だった。(本名か「渡世名」かは不明)
俺を知ってたり、見覚えが有ったのも当然で、この2人、俺が逮捕された事件の際に「台東区」に来ていた。
ちなみに、「NEO Tokyo site02」こと、渋谷・新宿区は、「NEO Tokyo」の中でも特殊で、他の3つの「NEO Tokyo」は約2㎞×2㎞の区画が4つ集って1つの「人工島」を構成しているが、ここだけは、その島が2つに、島間を繋ぐ「橋」代りの2㎞×2㎞の区画である通称「神宮」の計9つの区画から成り立っている。
そして、通称「渋谷」の4区画の自警団が「原宿Heads」……戦闘要員はヒップホップかぶれのブレイク・ダンサー崩れが多いが、「ダンスが巧い奴と喧嘩する時は気を付けろ」と云う昭和の格闘家の言葉を地でいく、近接戦闘では侮れない連中ばかりだ。
通称「新宿区」の自警団は「四谷百人組」。江戸時代に、将軍が江戸を出る際の警固を担当した精鋭部隊が名前の由来で、日本古武道をやってる奴らが戦闘要員の中心メンバーだ。
通称「神宮」の自警団は「神宮
「なるほどな……『英霊顕彰会』の残党が拉致してきた連中を、元居た場所に戻す筈が……何故か『元居た場所』は日本の東北なのに、拉致被害者はベトナム人と……」
「ええ……」
「そして、この船は……多分、まだ、謎の武装集団に乗っ取られたまま……か……。厄介だな……」
「この船……外部との通信が遮断してる、って言いましたよね。多分、もっと
MC富三郎と藤井詩織が、そう説明する。
「何が起きてんですか?」
「国際問題」
「えっ?」
「ウチの『自警団』に情報を流してくれてる『日本再建機構』の内通者から、とんでもねえ話が入ってきた……中国政府・台湾政府・ベトナム政府・日本再建機構外交部が……緊急会談中らしい。元から、中国・台湾・ベトナムの三国が領土問題でもめてる最中に……ベトナム海軍の船が、中国と台湾の近海で目撃されてる」
「何の船なんですか?」
「陸戦隊の輸送船らしいが……詳しい情報は不明だ」
「ちょっと待て……何が起きてんだ? 俺達の『お客さん』の中に……ベトナムのVIPが居るとでも言うのか?」
「さもなくば……何者かに、拉致された自国民の行方を突き止めて……奪還しに来たか?」
何が……どうなってんだ、一体?
「まずは……この船そのものを奪還するか……。おそらく、司令官クラスは、この船の管制室だろう。力づくか……平和裡かはともかく、そいつと話をしねえと始まらねえ」
「あと、もう1つ問題が……」
「何ですか?」
「『神政会』も……動き出してるらしい」
神政会……それは、一〇年ほど前の富士の噴火による日本政府の壊滅の直後から、広島県全域を実効支配するようになった暴力団だ。
広島県内では……地方の首長も、地方議会も、警察さえも神政会の実質的な下部組織と化している。
「あと……神政会の『裏ボス』的な奴は……マジで
「何者なんですか?」
「名前は佐伯漣。二十後半ぐらいの女。経歴は……厳島神社の宮司一族の分家の出らしい以外は不明。ただし……『渋谷・新宿区』に神政会が本気で進出を試みた頃に『本土』の『正義の味方』達から、無茶苦茶な情報が入った」
「だから……一体、その佐伯漣って何者なんですか?」
「奴に関する情報その1。富士の噴火の直前に流れた、あの噂は本当だ。その2。『本土』の『正義の味方』どもが佐伯漣を倒せたとしても……数十万単位の人死にが出る可能性大。その3。佐伯漣を殺す事が出来たとしても、その能力は……佐伯漣の身近に居る誰かに受け継がれる可能性大」
「おいおい……無茶苦茶な話だけど……」
その時、久米の野郎が……かなり真剣な表情に……えっと……待て、こいつも……元ヤクザ。
「おい、何か知ってんのか?」
「判らねえ……」
「はぁ?」
「あん時……俺が見たモノが何だったのか……さっぱり判らねえ……」
「何を見たんだ?」
「俺が昔居た組や……昔戦った『正義の味方』どもにも『魔法使い』や『超能力者』は居たんで……その手の事は、少しは知ってるつもりだ。たしか……『魔法』や『超能力』ってのは、人間を呪い殺したり、悪霊なんかをブチのめすのは得意だが……物理現象を起こすのは苦手……そう云う理解でいいんだよな?」
「まあな……」
そうだ。例えば……「魔法」や「超能力」……いわば「先天的に使える『魔法』」では、人1人を呪い殺せるほどの「力」を消費して、人に火傷を負わせるのも一苦労な程度の炎を生み出すのがやっとだ。
当然ながら、非効率な「物理現象を起こせる魔法」は廃れていく一方だ。
「なら……俺が見たのは何だったんだ? 遥か上空の雪雲に穴を開けられるほどの衝撃波を生み出せる人間ってのは……?」
「お……おい……何を言ってる。そんな奴、居る訳が……」
「あと……噴火の直前に流れた噂ってのは……
「おいおい、いくら何でも都市伝説……」
「じゃあ聞くが……神政会が広島全域を1月足らずで制圧した時の武器や弾薬は……どこから湧いて出た?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます