第二章:リーサル・ウエポン

(1)

「おい、その兵隊どもが持ってた無線機は……?」

「それが……電源がOFFになってます」

 そう答えたのは「教授」。

「入れりゃいいだろ?」

「それが……ブッ壊れてるようには見えないのに全員分が自動的にOFFになってて……電源が入りません」

 無線機と言っても、今主流になってる「ブンコPhone」が出る前の携帯電話ぐらいより更に一回り大きく……小型モニタなんかも付いてて、結構、高機能なようだ。

「おい、見ろ……」

 その時、死んだ兵隊の服をひっぺがしてた久米が、そう声をかけた。

「何だ、こりゃ?」

 死んだ兵隊の心臓の真上あたりには……直系5㎝ぐらいの薄型でほぼ円形の電子機器らしきモノが貼り付いていた。

「多分だが……無線機その他の敵に奪われたらマズい事になる装備は、こいつとON・OFFが連動してるんだろ」

「へっ?」

「場所からして……心臓が動いてるかを検知する為のモノみたいですね」

 そう言ったのは……姐さんだった。

 つまり……この兵隊達の、その手の備品・装備は、持ち主の心肺停止が検出されたら、自動的に電源OFFになる、って仕掛けか……。

「巧い事、考えやがるな……」

 東南アジアの中には「新先進国」と言われてる国が何ヶ国か有る。日本もウカウカしてたら……どころの騒ぎじゃなくて、十年前の富士の噴火の時点で、その手の「新先進国」に抜かれてる分野なんて山程有ったらしい。

 今や数少ない日本が誇れる「最先端工業製品」の1つである高性能強化服パワード・スーツの「水城みずき」すらも、設計・改良・試作・テストなんかは北九州の門司もじに有る高木製作所で行なわれてるが、その高木製作所や関連会社は、肝心の生産部門や大量生産品が可能な工場が無いらしく、実際のブツは韓国や東南アジアの企業によるライセンス生産らしい。

「じゃあ、ちょっと探ってみますか……」

 姐さんは、そう言って目を閉じる。

 そして……。

 轟……。

 姐さんの体から「気」が四方八方に放射された。

 攻撃じゃない。

 いわば……レーダー波や潜水艦のソナーの音波みたいなモノだ。

「人が集まってるのは……3箇所。操舵室と……大部屋の客室と……食堂」

 大部屋と食堂には、客と……船を動かすのに必要ない船員が集められてるんだろう……。

「よ〜し、じゃあ……」

「すいません……後藤さんと教授はウチの『お客さん』達を見張ってて下さい」

 ……。

 …………。

 ……………………。

「私と久米さんで、操舵室に向かいます」

 ……あ……どうやら……既に「使えねえ奴」認定されてるらしい。

 ふと……渋谷・新宿区site02の2人を見ると……じゃんけんをしていて……。

「じゃあ、私が、この2人と一緒に操舵室に行くよ」

「俺は……あいつらを見張るのを手伝うわ」

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