(3)
「やっぱ、何か、おかしいっすよ」
「けど、『地元』に送還させないと、向うの警察が
俺の指摘に
俺達は「フカヒレ加工の職人さん達」を称する(本人達が、そう言ってる訳じゃないが)十数人のベトナム人(多分)と共に、民間のフェリーに乗り込んだ。
夜の7時頃に博多港を出発。
途中、
なお、自称「右翼系政治団体」(実質はヤクザ)である神政会が実効支配している広島と、カルト政党「獅子の党」による一党独裁体制の元、「シン日本首都」を称して、半ば独立テロ国家と化している大阪は、当然ながら避ける航路となっている。
そして、大洗で「地元」の県警が「フカヒレ加工の職人さん達」を迎えに来る手筈になっていた。
「大体……身元の確認はどうやったんですか?」
「向こうの県警は我々を信用してないようで……名前その他の個人情報は教えてくれませんでした」
「まぁ……
「お前が言うか」
久米からツッコミが入る。
「うるせえ、
「ただし、全員に汎用タイプの個人識別ICタグが埋め込まれていて、それで確認を行ないました」
「疑い出しゃあ、キリがない状況ですか……」
「まぁ、確かに……」
「で、どうなんだ『教授』? あいつらの様子は……」
久米の野郎は、そう言って船内レストランの近くの席に居るベトナム人(多分)達の方に目を向ける。
奴の前には、一番
一番多い量の飯を一番早く喰い終ってるだけじゃなくて……何故か、今回は、マナーも俺達の中では一番御上品だった。
「英語が出来る人と話した限りでは……何か……僕達の事をヤクザか何かだと思ってるみたいです」
ベトナム人(多分)達は、食事を注文してはいるが……あまり、食は進んでないようだった。テーブルに置かてれる料理が、さっきから少しも減っちゃいねえ。
「似たようなモノだ……待てよ……迎えに来る地元県警とやらはマトモなのか?」
「へっ?」
「富士の噴火で首都圏が滅んでから、各県警の質はピンキリになっちまった。そこの県警は……マトモなのか? 今時、ヤクザの方が良心的な県警なんて山程有るぜ」
「判りました。仙台沖の『
「そもそも……何か……引っ掛か……あっ……」
「どうした?」
「
「あっ……」
「やっぱりか……」
「あの……どう云う事ですか?」
何故か、一番頭がいい筈の「教授」だけが……裏に有るかも知れないロクデモない事態を推察出来てないようだ。
「だから、
「やれやれ……ところで……酒頼んでいい?」
「駄目です」
「いや、俺、高速治癒能力とやらの副作用か何かで……1時間で酔いが覚めるから」
「駄目です。我々もお役所仕事なんで、正式なルートで飲酒願いを提出して受理されるまでは、絶対に駄目です」
「やれやれ……じゃあ、デザートに丸天うどん」
「おい、『狼男』。まだ食う気か?」
「だから……御上品な食事は喰った気しねえんだよ」
何で、こんなのが、娑婆に居た時、俺達ん中で一番いいモノ喰ってたんだよ?
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