(2)
「やっぱ、あのフカヒレもったいなかったな」
「娑婆でヤー公やってた時、中国の『業者』との取引のついでに、上海のレストランで喰った事有るけど……美味い
俺のボヤキに久米の野郎が、そう答える。
「てめえはクソ固い肉でも食ってろ」
「肉は柔らかいのが高級って風潮がおかしんだ。柔らかい肉は味もあっさり目か、脂でゴマかしてる事が多いだろ」
「普通の人間は、あんたみたいに、骨ごと肉を噛み砕けねえの」
「ところで……僕達、囚人部隊の筈なのに、何で民間のフェリーに乗れるんですか?」
「安心して下さい。逃げようとしたり、一般人に危害を加えたら、貴方達の首に埋め込まれてる爆弾が爆発する手筈になってます。そうなれば、久米さんだって、良くて一生半身不随です」
今度は、「教授」の質問に監視役の摩由璃
「あ、そうだ、
「わかりました」
「弁護士? 再審請求でもやる気か?」
久米が変な事を言ったんで、俺は、そう訊いた。
「娑婆に居る元カミさんとの交渉。
「あんただったら……そんなの破っても大丈夫だろ。警察のレンジャー隊1個中隊を1人で全滅させられる化物だろ、あんた」
「お前、阿呆か、今まで何もおかしいと思ってなかったのか?」
「へっ?」
「その『化物』が何で
「あ……あれって……」
「教授」が指差す先に色取り取りのスカジャンを着た一団と……それに連れられた……ん?
背中に七福神が乗った宝船が描かれたスカジャンは、「台東区」の入谷地区の自警団「入谷七福神」の「制服」だ。
Site01こと「千代田区」が有るのは、唐津と壱岐の間、Site04こと「台東区」は壱岐と対馬の間で互いに最も近い「東京」だ。
そして、「NEO TOKYOの最も長い夜」事件で、「千代田区」の警察と全自警団が事実上崩壊して以降は、「千代田区」の治安は「台東区」の自警団により維持されている。
その「千代田区」から東北に送還する予定の、「英霊顕彰会」に拉致されたフカヒレ加工の職人さん達が「入谷七福神」の連中に連れられてやって来たようだ。
「ご苦労様です」
「ご苦労様です」
入谷七福神のリーダーらしい中年男と摩由璃
自警団も警察も「体育会系」の文化の組織なのは同じなので、この手の「外交儀礼」に関しては……結構、お堅い。
「何か連絡事項は有りますか?」
「それが……何か手違いが有ったようなのですが……」
「と言いますと?」
「送還する筈の拉致被害者の方々ですが……」
その「拉致被害者」は約十数人。
男女半々ぐらいで……年齢は二〇代から三〇代ぐらい……けど……何か違和感が有る……えっと……何だ?
「明らかに変です……
「へっ?」
「手短に判っている事だけを報告します。大半の方が日本語は日常会話程度。他の言語に関しては……英語は日常会話程度は話せる方が半数以上。北京語を話せる方は
「フ……フランス語? こ……この人達は一体?」
「まだ……我々も事態を完全に把握していませんが……この方々は……
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