第52話
「おかしい……人が居ない」
中庭に出た小津さんがボソリと呟く。確かに変だ、中庭のベンチは普段でも席が埋まる程度の
「やっぱり……」
そう言って黙りこくる小津さんへ、ボクは疑問を飛ばす。
「やっぱりって?」
「
「? 良いけど……」
小津さんは狐の形を両手で作り、耳が重なる様クロスさせて
ボク2倍以上の体躯に、死体の様に白い肌と異様に伸びた腕、腹部だけが異様に膨らんだガリガリの体、額から生える赤黒い角が、人では無いバケモノことを主張している。
バケモノから視線を外し、窓越しに小津さんの方を向くと、ボクはすぐさま指を解いて走り出し叫ぶ。
「モモカ!!」
バケモノから離された場所にモモカが倒れていた。
肌に触れると異様に冷たく、触れているだけでボクの体温すら奪われていく。辛うじて心臓は動いているのはわかるが、呼吸をしているかすら怪しい。
「どうしよう……!」
信楽と樅に触れる小津さんは涙目になっている。ボクだってどうしたらいいかなんてわからない。保健室に連れて行こうと肩に触れると、頭上から怒号が飛んでくる。
「動かすでない!! まだ安全とは言えぬ!」
驚いて声のする方へ向くと、黒い耳に黒い尻尾を生やした人が宙に静止し、毛を逆立てている。え、なにあれ。
「
宙を浮く人は、背を向けたまま小津さんにクマ姉を呼ぶよう指示する。ボクには浮いてる人が
「わかった、先生呼んでくる! ……
「ハッ! 誰に言うておる!!」
小津さんはそのまま廊下へと戻っていく。というか…うん、やっぱり天城さんで合ってたのか。きっと、ボクと同じで人間ではないんだろう。
「おい鬼!!」
「えっと……ボクのこと?」
「はん、他に誰が居ようか」
まぁそれもそうか。吸血鬼も鬼って付いてるし。
「んで、何すりゃいいの天城さ……ん?」
「説明は後でしてやる、手伝え」
「何? あのバケモンぶっ飛ばせばいい?」
「話が早くて助かるな。わぬしの
天城さんの言葉を
「レヽナニレヽ! ゃめз!」
バケモノが何か
「これが当代の鬼の主か……
どこがだよ。とりあえず倒れたバケモノの腕を
「レヽナニレヽレヽナニレヽゃめτ」
「ちょっと静かにしといてくんない?」
捩じるのを止め、全力で引っ張り肩関節を外す。その独特な感触が不快で、投げる様に地面へ腕を落とす。力なくダラリとした腕は、不気味に
「ゃめτ<れ! ー⊂″ぅιτ≠彡レよξωナょ⊇ー⊂すゑωナニ″!」
まじでコイツが何言ってるかわからん。腕は元に戻ってるし、だんだんとこっちが
「鬼よ、コヤツは
「それ先に言ってよ天城さん……ってか刀途って何?」
「あぁ、簡単に言えば三途の川のことだ。鬼の主だというのに、この程度も知らんのか?」
知らないよ。というか、勝手にボクを鬼の主にしないで欲しいんだけど。
「んで、どうするのこのバケモノ」
「才∠レよノヾヶモ丿ι″ゃナょレヽ!」
天城さんに
「ナょωτ″才∠カゞ⊇ωナょめレニぁゎナょレヽー⊂レヽレナナょレヽωナニ″!」
「そのまま取り押さえてくれ。あれこれ喚くだろうが、コヤツの言葉は無視して構わん。所詮は亡者の戯言に過ぎぬ」
まぁなんて言ってるか聞き取れないもんなぁ。天城さんの指示に従い、首元を踏みながら両腕を軽く引っ張る様にしてバケモノを押さえつける。
「そこまでしろとは言っとらんが……まぁいい、離すなよ」
軽く呆れながら、天城さんは掌を鉤爪の様に構え、息を
バチバチと、何か弾ける様な音がすると、腐った肉が焼ける様な匂いが濃く漂い始める。先程までの場所に頭部はなく、首元に稲妻状の白い傷跡だけが残っている。
「これでもうコヤツは消える。首から下も
匂いだけは
「どうした?
「あぁうん、そうだった。ごめんごめん」
声を掛けられてハッとなる。モモカ達は一刻を争うんだった。クマ姉とか来た時に手伝わないと。
【後書き】
全く文章が書けず、2ヵ月程更新が滞っていました。また来週から定期的に更新していこうと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます