第31話
「んがっ!」
ビクリと起き上がり、背を伸ばしながら時刻を確認する。
「3時かぁ……寝よ」
口元を拭いながら付けぱなっしのPCをスリープモードへ切り替える。ゲーミングチェアから空き缶をゴミ箱に投げ捨て、のろのろと布団へ潜り込む。
スマホを手に取ろうとするも、先程まで突っ伏してた机の上に数台が乱雑に置かれている。わざわざ起き上がる気力は出ず、そのまま眠ることにした。
バタンと玄関扉の閉じる音で意識が起きる。寝起き特有のまだハッキリとしない頭で、誰かが喋っているのがわかる。きっとモモカだろう。
「んぁぇ……まだ寝る……」
以前まで味わうことの無かった
「起きてください~」
困った様に体が揺さぶられる。別にまだいいじゃんか、時計チラ見したら余裕あったぞ。
しかし、揺さぶりが止まることは無い。今日のモモカはいつもと違うな……そうだ。
「よっ」
「!?」
大きく布団を持ち上げ、抱きついて布団へ引きずり込む。今日のモモカはいつもより
「モモカじゃない?」
「あの、あの! うちモモカさんじゃないです!」
「うぇっ!? アカネ!?」
ボクを起こしに来たのは、あれから1週間
引きずり込まれた影響でクシャクシャになった髪を撫でつけながら、ボクの隣へ腰かける。軽くだが2人分の体重にベッドが沈む。
「あーその、ごめん。確認とかすれば良かった」
「大丈夫ですよハクさん。ちょっとビックリしましたけど」
「悪かった、モモカだと思って。つーか、連絡くらいくれって。みんな心配してたぞ」
その一言を聞くと、アカネは申し訳なさそうになる。アカネが学校に来なくなってから1週間が経っている。
「うちの意思じゃなかったとは言え、吸血しちゃったのがどうにも引けてしまって……」
自分の意思ではない吸血。本能に引っ張られてしまった後悔は、ボクが良く知っている。
「罪悪感が何度も反響するんです。今まで感じなかったのに」
小さな手でベッドの縁をギュッと握るアカネを見て、ボクは顔を覗き込んだ。今にも泣きそうな表情をしている。
「それってさ、人間に近づいてるってことじゃないか? 人間と友達で居たいんだろ?」
「はい……」
「そう思えるってことは、その感性は大事なんだよ。吸血鬼と人間の共存には」
ベッドから立ち上がり、くるりと反転するとアカネに向けて手を伸ばす。
「人間と一緒に暮らせるよう、吸血鬼同士頑張ろうぜ」
「はい! うち、ちゃんと人間の友達が出来るよう頑張ります!」
アカネはボクの手を握って立ち上がる。ボクと同じ目線に並ぶ。
「とりあえず、今日の登校から始める感じ?」
「そう、ですね。本当は最後の登校のつもりでしたけど……いろいろ頑張ってみます」
えへへと笑うアカネに、ボクもつられて笑顔になる。
「話し終わった? 朝ごはん用意して待ってたんだけど」
「やっぱモモカもいたのか。おはよ……う」
目が笑ってない。アカネが家に入れたのを考えるといると思ってたけどさ。
「も、モモカさん、うち何かしちゃいました……?」
「ううん。アカネちゃんは何もしてないよ~。ハクちゃん後でお話があります」
眼から来る威圧が怖い。
「そういや、今日から学校はいいんだけどさ。テスト期間昨日までだったの知ってるか?」
目玉焼きを
「ど、どうしよう……」
ボクとモモカへ、助けを求める視線を交互に送る。身長も相まってチワワのキャラクターみたいだ。
「大丈夫だよ~。クマn……久間先生がある程度事情話してくれるはずだよ。期末テストだから免除とかは無いと思うけどね~」
「べ、勉強しないと……!」
進級がと
「そしたらわたし教えてあげようか~?」
「良いんですかモモカさん」
「うん~。勉強嫌いじゃないし、特待生って立場だもん。それくらい教えるよ~」
そういや特待生だったなモモカ……。なんで授業の内容は覚えてるのに人の名前と顔を覚えるのは苦手なんだろうか。
ふと、居間の時計を視界に入ると、のんびりしている程の時間は無かった。
「やっべ、ボク着替えてくるわ」
空になった食器を食洗器へ入れ、寝巻き代わりのジャージとTシャツを脱ぎ捨てながら自室へ向かう。
「せめて見えないとこでやってよハクちゃん!」
「悪い悪い」
下着を身に着け、上からインナーを着込む。流石にもう寒い。Yシャツ、スカート、ブレザーの順で身に纏い、タイツを履く。厚手ではないけれど、タイツの有無で暖かさは全く違う。
最後にパーカーを着込んで
「ほい、お待たせ。2人とも出れる?」
「大丈夫だよ~。あ、食洗器回しといたね」
「せんきゅー。んじゃ行こうぜ」
2人に手招きしながら玄関へ向かう。この数か月で、環境とか人付き合いが目まぐるしく変わった気がする。1年生も僅かって時期に放ってしまったけれど、きっと良いことなんじゃないだろうか。今日も学校頑張りますか。
【後書き】
一応一区切りですが、まだ続きます。
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