第29話a
冷え切った夜風を全身で受けながら、人通りの減った街を
「~~っ!!」
冬の寒さが肌に突き刺さる。叫びたくはあるけれど、アカネを背負っている現状では混乱を招き
周囲に人がいないことを確認すると、髪を黒く染め上げゆっくり着地する。物音を立てない様
「おう、おかえり。連れて帰っからアカネよこしな」
「ありがとうクマ姉。モモカはどんな感じ?」
クマ姉に背を向けアカネを預ける。軽くなったのを感じ振り返ると、アカネをお姫様抱っこするクマ姉。まさか過ぎる。
「ちょうどさっき起きたな、貧血の心配もないと思う。……んだよ、これが一番楽なんだから仕方ねぇだろうが」
「別にぃ~。不純同性交友と言っておきながら、自分はそういう行動するんだなって思っただけだよ」
「あぁ、アレな。出まかせだ、校則で定められるわけねぇだろ馬鹿が」
クマ姉の発言に思わずつんのめる。出まかせだったのアレ!?
「おっと、アカネが寝てんだから叫ぶなよ。そもそも、デートとか言ってる時点で気づいとけ」
さっさとくっ付けって思ってたからなと、ニヤニヤとした表情でからかわれる。ちくしょう、トラブルが終わった
「アカネに手だすなよ!」
「んなことするわきゃねーだろ、アホか。んじゃ戸締りはシッカリな」
「悪いな、1つだけ言い忘れたことがある」
ドアノブに手を掛けた所で呼び止められる。なんだよー、敗者への
「
「……マジ?」
「おう。フリじゃねぇからな。シッカリ守れよ」
それだけ言うと、クマ姉はそそくさと居なくなる。えー……もうちょいなんかあると思うじゃん。
「2か月となると、1月の中盤くらいか。来年って考える時が重いな……いやむしろ少し遅めのお年玉と思えば?」
ぶつくさ
「ハクちゃんおかえり~」
「わっ!?」
くだらないことを考えていると、靴を脱ぐ間もなく抱きしめられる。寝起きの体温が冷え切った体に熱をくれる。
「……ただいまモモカ」
「うんおかえり~。ハクちゃんちべたい」
「ずっと外だったからね。ほら、パーカー貸すから着替えて寝ようよ」
モモカに抱きしめるのをやめさせ靴を脱ぐ。オーバーサイズのパーカーならモモカも着れるだろうし、制服よりは多少マシのはずだ。
「一緒に寝よ~?」
甘えた表情で手を
「う~ん……シャワー浴びてから寝たいかな。流石に寒いし」
本当なら今すぐ一緒に寝たい。でも、今日の疲労感と冷えの解消にシャワーは外せない。
「ならわたしも一緒に入る」
「え”っ」
「ん~♪」
浴室からご機嫌な鼻歌が聞こえてくる。今でも何度か一緒に入ることはあったはずなのに、謎に
「ハクちゃんまだ~?」
素足で感じる床の冷たさが、呼びかけと共に風呂に入ることを後押してくる。腹をくくるか。
最後の抵抗代わりに身に着けていた下着を洗濯機に放り込み、乾燥も選択して回す。一呼吸し風呂扉を開けた。
肩まで
「ハクちゃんどうかした?」
……あっぶねぇ!? 何考えてるんだボクは。嫌悪していた筈の
「だいっ……じょうぶ、なんでもないよ」
ゴクリと喉を鳴らし、思想と本能を飲み込む。下手に長居すると不味いかもしれない、程々にしてさっさと出よう。
「ハクちゃんもおいでよ」
「へっ?」
シャワーを軽く流し、シャンプー容器に手を掛けた所で提案される。今この状況で一緒に湯船とか何するかわからんぞボク。
「ほれほれ~」
「……っ!」
モモカの手招きには
「ぅえええええ……あったまる……」
シャワーだけでは足りなかったのか、足先に感じる温もりだけでもボクの疲労が抜けていく。
「こっちおいでよ」
モモカが太ももの間を指さしてくる。そこに座れと申すか。
「えー……それは恥ずかしいんだけど」
「今更だよ~」
あまり
腰を降ろして湯船に全身をつけるのと同時に、モモカの双丘へと頭を預ける。相乗効果で疲労が取れていく気がしないでもない。
「お疲れ様ハクちゃん」
「うん……モモカのおかげだよ」
それを聴いて安心したのか、抱えるように腕をまわしてくる。痛みはないけれど、指先に力が入っているのがわかる。
「ごめんね、モモカ」
申し訳なさを感じ、押し付ける様に体重を預ける。つられてモモカの抱きしめる力を強くなる。
心配から来たであろうその行為に、ボクは愛を感じた。
「それじゃあおやすみ~」
「お、おやすみ」
いつも通りモモカをベッドで寝かそうとしたのだが、今日はダメらしい。
「一緒に寝る!」
の一点張り。モモカが良いなら構わないんだけど、2人で寝るにはボクのベッドは狭すぎるし、緊張して寝れない気がする。
「やっぱ狭いな……」
「たまにはいいと思うよ~」
体を横向きにし、抱く様にして体を寄せてくる。モモカから香るシャンプーが、自分と同じ物の筈なのに、どこか心地よく感じ、意識が断続的になる。
モモカの匂いに包まれながら、ボクは眠りにつく。
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