第28話
「いただきます」
ボクはそう言うと、アカネの首筋へと牙を突き立てる。口内がゆっくりとアカネの血で満たされていく。濃厚でドロリとした
「!? ハクさん……!」
アカネは距離を取ろうとしてくるが、ハグする様に押さえつける。モモカのと違って、美味しいとは思え無い。吸血鬼の血だからだろうか。
飲み過ぎに注意しながら、吸血鬼の力の源を減らしていく。口の端から血の
「う……ぁ……」
「うっぷ、いい気分じゃないな……」
「ふむ……君に魅了の瞳は効果が無いのかな?」
「ちょっとはあったよ。つーかなんで吸血止めなかったんだよ。邪魔なんだろボクは」
「君の血があればリカバリー可能だ。吸血後の力も気になるからね」
「はっ、言ってろ」
鼻で軽く笑い、鳩尾目掛けて右拳を放つ。その勢いで
「ぐぅ……! 吸血鬼後は不利か」
吹き飛ばされつつも、クソ親父は
「!?」
「返してもらうぞ、ボクの血」
「やめろ!」
全ての錠剤を口に含んで噛み砕く。味はないのが、少し残念かな。
「っ〜! ……
一瞬怒りを
「計画とかマジでどうでもいい。ボクらに押し付けんな、高校生だぞ」
高校生と言えど、ボクはまだ15歳。年齢も精神も、中学生と大して変わらんが。
「何故理解しない! 始祖様が
耳障りな発言を
「そもそも、始祖は討伐されてるんだろ? んじゃ、同じこと起きてまた倒されるだけだって。悪が栄えた試し無しって言うし」
「言わせておけば!」
いつもの張り付いた笑みは消え、
なんでお母さんはコイツと結婚したんだろうか。あれかな、昔は良い人だった的な……興味湧かないからどうでもいいや。
「んで、どうすんの。お前もう出来ること無いだろ」
「……まだだ、まだ私には素体が残っている!」
「あ"?」
馬鹿馬鹿しい発言が逆鱗を
「さぁ来るんだ!
「来るわけねぇだろ」
カス野郎の顔面に全力で拳を叩き込む。手に抜ける、鼻の骨を砕く感触が気持ち悪い。
「んがぁぐ!?」
「意識無いんだから、無理させようとしてんじゃねぇ!」
吹き飛ぶカスを跳んで追い越し、切り返して背中に膝蹴りをぶち込んだ。バギッと綺麗な音が鳴る。
「ど、何処からこんな力が」
地に
「なんでボクがエナドリ作ってたと思う? 血の代わりに飲む為だよ」
「なん……だと」
そう、別に商品を作りたくて研究をしていた訳では無い。血の代替品を研究していたら産まれたものに過ぎない。
ついでに市販しようとしたら人間に不評だっただけで……。
「んで、ボクの血と
「ぐっ……」
ボクの血と馴染ませたんなら、ボクが飲んだ時の効力は大きい訳で。普段よりも血の流れが意識しやすい。一呼吸し、全身の血を巡らせる。
片脚に力を込め、そのままコンクリートの地面を割砕き、土を露出させた。それを幾度か繰り返し、穴を大人1人分程のサイズまで拡張する。
「大丈夫だと思うけど、死ぬなよ?」
「何をするつもりだ! ぬぉ!?」
「んじゃ、ブラジルの人によろしく」
開いた穴目掛けてサッカーボールの如く全力で蹴り飛ばす。めっちゃ足先の感触が気持ち悪い。さっさと風呂入って洗いたい。
「っしゃあ! ナイスシュート」
綺麗に穴へとカスかゴールインし、大きな音と共に土が
「んー……埋めるか」
先程割砕いたコンクリートや土を使い、誤魔化しにかかる。無いと思うけど、ホントにブラジル行ってたらどうしよう。
「帰るかぁ」
遠くからパトカーの音が聞こえてきたし、この現場からさっさと居なくならなくては。
未だ寝ているアカネを背負い、宙へ蹴り出す。視界に映る夜月、半分に欠けたその姿を、なんだかとても綺麗に感じた。
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