第25話
「はぁ……はぁ……」
脳が酸素を要求し、肺がめいいっぱい動いています。それでも、起き上がる力は蒐にはありません。
「う、うちは、なんでハクさんを……」
酸欠で思考がボンヤリと
「んぐっぃ……!?」
30分程経過したころ、
「ここ……どこ? うち何してたんだっけ……え、恰好どうして」
記憶が
「どうしよう……中に入れたりとかしないよね」
恐る恐るドアノブを
「良かった……失礼します」
階段を少し降りていくと、オフィスのあるフロアに出た様で、目的のトイレを見つけることが出来ました。
蒐はホッとした表情を一瞬浮かべた後、辺りをきょろきょろと見回し、トイレへ入ります。
「うぅ……服の汚れどうしよう」
綺麗になった手と、汚れたままの服を鏡越しに
黒と茜が
「えっと、イメージして……えい。……どうして」
髪色を黒にしようとしましたが、斑模様が形を変えるだけで、染め上げることは叶いません。
「ならこっちの……っ!!」
今度は茜色に変化させようとしましたが、学校で自身のした行為を思い出してしまいます。
「え……嘘……なんで……おえっ」
何とか踏みとどまりましたが、八雲との食事が浮かび上がり、理解してしまいます。自分の犯した罪を。
口内に
「う”……え”ろ”ろぇろごっ……けほっ、けほっ! けっ……うおぇっ……え”ろ”ろ”ろ”ろ”……」
胃が空になるまで
「うちは……なんであんなことを……」
「吸血鬼だから仕方ないんじゃないですか」
洗面所で口を
「どこから!? う、うち……?」
「当り前じゃないですか。うちはおかしなことを言いますね」
鏡の中の自分はそう答えほほ笑んだと、蒐は
「勝手に人から血を吸うのはダメです。友人なら
「昔からずっとやってたのに、今更そんなこと言っても説得力なんてありませんよ?」
「う、うちは変わったんです! ハクさんとモモカさんみたいに、一緒に暮らせる様にって」
「どこまで本当なんでしょうか? もしかしたらハクさんはモモカさんの血を吸ってるかもしれませんよ? 普段はうちより強いじゃないですか」
必死に反論しますが、前々から
「違う……うちはそんなこと思ってない! 消えてよ偽物!」
頭を抱えその場にしゃがみ込みますが、声は消えてくれません。
「違わないですよ。うちは蒐」
「うちが蒐……椰織蒐! 偽物はどこかいって!!」
大きく叫ぶと、洗面所のガラスが砕け、蒐に降り注ぎますが、身体には傷一切つきません。
「うちは吸血鬼。人間みたく
「ああああああああ!」
結局、もう一人の自分が消えることはありませんでした。頭を抱え
「ふむ……もう少し血の濃度は薄めた方がいいな。人格に影響が出るのは想定していなかった」
ベッドに寝かされる蒐を見ながら、
「それにしても良いデータが取れた。これで君は更に始祖様へと近づく」
不敵な笑みを浮かべ、八雲は茜色に染まりきった髪を手に取ります。
「……ん、ここは……」
「おはよう、調子はどうだい?」
上半身を起こし体を伸ばすと、蒐は元気よく答えます。
「はい! 問題ないです八雲様!」
「それじゃあ……君は一体誰だい?」
「うちは椰織蒐、吸血鬼ですよ、八雲様」
嬉しそうに紅い瞳を輝かせながら、蒐は言い切りました。
【後書き】
少し早いですが、年末年始は更新を休みます。休憩とインプット期間にさせてください(FGO7章とか……)
次回更新は三が日以降の予定です。
prime videoで見れるオススメのアニメがあったら、コメントかTwitterで教えていただけるとありがたいです。
https://twitter.com/rex96takeshi
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