第17話
「2週間!?」
「えぇ、2週間です
目の前の医者は
「このまま問題無ければリハビリの後、退院という形になります」
ほーん、なるほどね。待って、すぐに帰れないの?
「リハビリってどの程度……」
「やってみてになるかと。荊さんの事情はある程度
それもそうか。じいちゃん先生の所と違い、この病院は吸血鬼も公平に
「とりあえず今日からリハビリ始めましょうか。
「はい……」
とても
髪を黒くする余力も無く、歩行器で支えなければ歩くこともままならない。そんな姿が、他の入院患者からは健気に映るらしい。そんな大層なもんじゃないんだが。
「そうだ荊さん。時間があるなら、
そうか、ここはお母さんが入院してる所か。でも、ここに来たのは始めてだった。
お母さんは10年前……ボクが初めて吸血をした頃に、急な入院をしたと言われた。寝たきり状態と聞いているけれど、その病状を教えて貰えてはいない。
10年ぶりのお母さんは、今のボクと会ったらなんと言うのだろうか。……起きていたらの話だけれど。
「ふぐっ……」
腕がつってきた。力が入らないのがあまりにも
「帰りたい……」
寝たきりの人を
そんな弱音を吐いていると、ようやく目的地へと
「あ”-疲れた……失礼しまーす」
返事も待たずに入室すると、個室内に『××ガールズ・プリティーコネクト!』と、ゲームタイトルの読み上げが響く。
「へ?」
「ちょっと
寝たきりと聞いていた人物が、ベッドでゲームをやっている事象に全身の力が抜ける。どーなってんだ。
感情が追い付かず涙が
「珀!? 急に泣いてどうしたの!? お母さん何かしちゃった?」
何もしてないから泣いちゃったんだ。
「いやーごめんね、何年か前から、寝たきりじゃなくなったのよ」
「なんでボクに教えてくれなかったの!?」
あれから5分程経過し、そこそこ落ち着いたはずのボクを、お母さんが
「ん~、理由はいろいろあるけど……珀には秘密☆」
どうしよう10年ぶりの再会だろ言うのに喜べない。ボクの覚えているお母さんはこんなだっただろうか。
「冗談は置いておきましょう。会いたかったわ珀」
幼い頃のように、腕を広げたお母さんに体を預けると、深く柔らかに
「うん……ボクも会いたかったよ、お母さん」
「さて……お母さん疲れたから、ハグはもういいかしら」
「……今ボク弱ってて、動くの
「お母さんも長年の入院で弱ってるのよねぇ」
なんで変な所で似てるんだこの親子。
「やっぱりさ、寝たきりじゃなくなったのは教えてほしかったなって」
「そうね……お母さんも、今のハグをもっと早く味わいたかったわ。モモカちゃんに伝えてもらえばよかった」
ちょっとまて、今聞き捨てならないワードが聞こえたぞ。
「もしかしてなんだけど、知らないのってボクだけ?」
「そうね、珀だけのはずよ。とわちゃんも知ってるし、モモカちゃんはよくお見舞いに来てくれるのよ~」
ねぇ! ボクの知らない情報どんどん出てくるんだけど!? マジで
「ふふふ、それだけ豊かに表情が変わってくれるなら良かった。ごめんね、10年間会えなくて」
「ううん、言えなくても理由があるんでしょ。またちゃんと話せるだけで、ボクは嬉しいよ」
「お母さんがいなくても、珀がいい子に育ってくれて良かった。さ、そろそろ自分の部屋に戻りなさい」
お母さんは時計を確認すると、そう
「えー、まだ居たいんだけど」
「お母さん、ピックアップ期間が終わるまでに、対象キャラを5凸したいのよね」
お母さんのソシャゲ事情とか聞きたくなかった……。
「ボクは別にガチャ引いてても気にしないけど」
「ダーメ、お母さんが気にするの。ほら、立って立って」
むぅ、10年ぶりの親子の交流だというのに。ゆっくりと立ち上がり、歩行器に手をかける。
「また来ていいかな? お母さん」
「毎日じゃなきゃいいわよ。そうだ、モモカちゃんにお礼言っときなさいよ。看病と輸血してくれたのあの子なんだから」
「うん、いつも以上に言っとく」
そうしてお母さんの病室を後にする。にしても輸血か……血液型違ったはずなんだけどな。
「……まさかね」
脳裏によぎる、いつも手渡される血液カプセル。考えてもしゃーないか、病室もどろ。
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