第12話b
あまりにも暇。エントランスの天井を
「あ"ー……暇」
少しの間、床を眺めていると
「君はなにしてるんだい?」
あ、
「あんたが呼んだんだろ。待たせんな」
「これでも
やれやれと両手で
「んで、何の用? どうせろくな話じゃないんだろ」
「私の話はどれも真面目だよ。君がどう
いちいち
ドブカスは向かいのソファへ
「し、失礼致します……」
ボクには震える声で珈琲が差し出される。視線を向けると、メイクの時のスタッフだった。
「ひっ……」
恐怖を
「君はあの子に何をしたんだい?」
「別に、勝手なこと言われたから怒っただけ」
「それは良くないね。あの子には後でお
どうせ、テキトーな人間から吸血させるだけだろうに。部下を思いやる
「んで、本題は何? さっさと終わらせてよ」
「せっかちだね君は。誰に似たんだか」
そう言って、テーブルに
「君が連れてきた
と言われても、
「スピーチ聞いてなかったの?」
「私は
もう帰っていいか? ボクも虚無を味わう程、暇じゃないんだわ。
「はぁ……出会ったのは偶然。知り合いに吸血してたのを見かけたんだ」
「ほうほう、それで?」
「それだけ。後は転校してきてクラスメイトになった。それはあんたも知ってるだろ、理事長」
白々しいと
ボクらの通う学校は、コイツが運営に関わってる。生徒内ではボクとアカネだけだが、教師陣に吸血鬼が何人かいる。
どうせアカネの転校もコイツが関わってるんだろう。
「昔
嘘つけ。気持ちのこもってない笑顔でバレバレだよ。
ため息をつき、珈琲を
「それで……あの子、
「聞いたけど……なんでその話題?」
なんだか気持ち悪さを感じる。名前知ってる時点で、やっぱ吸血鬼って分かってるなコイツ。
「確認だよ。一応のね」
「……九州の上の方とは聞いたけど、
「そうか! そうか!」
急にテンションが上がるの、ホント気持ち悪い。なんなんだコイツ。
「なに、私の説が正しかったというだけだよ」
そう言うとソファから立ち上がる。
「……
「始祖様……あぁ、
「その始祖がどうかしたの? 実は生きてましたとかそういう話?」
「実はそうなんだ。生き延びて、九州の方まで逃げたという話があってね」
「……ならアカネは、その子孫とでも言いたい訳?」
「そんな訳ないだろう。君は浅はかだね」
予感を外し
「ただし、彼女が始祖様に近いのは事実だ」
「……は? どういうことだよ!?」
机を叩きながら立ち上がると、くらりと視界が
「……今夜はもう休むといい。部屋は用意してある」
「まだ話の途中だろ……」
「
クソっ……ドブカス野郎が。立ちくらみのせいで、追いかける気力が出ない。
「お部屋はこちらになります」
「あぁ、ありがと」
案内された部屋に入ると、
カバンから連絡用のスマホを取り出し、モモカへメッセージを送ると、すぐさま既読が付いた。もう帰宅出来たのかな。
「あれっ……」
突然、
「さむっ!」
肌を刺す寒さで目が覚める。朝の寒さは
スマホを確認すると4時を少し回った所。モモカから、20件程連絡が来ていた。
「うーわ、めっちゃ誤字ってる。なんじゃこりゃ」
謎の文字列は、過剰な心配を与えるのには充分だった。
「寝落ちてたわ、っと。シャワー浴びっかぁ」
メッセージを送り、スマホをベッドに放り投げる。ソシャゲのログインは後でいいや。
「ふっ! くっ! ほっ! 届いた!」
背中のチャックに苦戦し、ようやくドレスから解放される。うーむ、なんか
にしてもドレスどうしたもんかなー、勝手にクリーニングされるとかない?
「へっぷち!」
寒さで体が縮こまる。裸で考えごとなんてするもんじゃない。
シャワーに向かおうとした時だった。プシューと部屋全体に何かが
「!?」
急いで口と鼻を
両腕はダランと垂れ下がり、受け身も取れず床に倒れ込む。
「起きてるのは予想外だが、これでいい。運べ」
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