第10話
「ハクちゃん! ストップ!
モモカからの静止で
「ふぅ……」
深くため息をつく。
「えっと、その、ごめん……なさい」
「ひっ……い、いえ、私こそ申し訳ございませんでした珀様、失礼します」
手を差し出すも、それが取られることはない。そのまま青い顔をしてメイクスタッフは退室してしまう。怯えさせちゃった。
「ハクちゃん……」
ごめんねモモカ、君の前で誰かを傷つけようとして。
「ハ、ハクさん……」
ごめんねアカネ、変なところ見せちゃって。
「とってもカッコよかったです!」
正気かコイツ。
「よしよ〜し、もう大丈夫だよハクちゃん」
子供をあやす様に、
「ありがとうモモカ、落ち着いた。ごめんね2人とも」
立ち上がり、2人に謝罪する。メンタルは持ち直しけど……壁と椅子どうしようかな。
「失礼
ノック音に振り返ると、衣装を担当していた顔馴染みのスタッフが戻ってきている。
「謝らないでよ、悪いのはボクなんだから」
「いえ、こちらの
「……どうする予定?」
嫌な考えが頭をよぎり、口から
「珀様のスタッフでは無くなります。別の方へと回されるかと」
「よ、よかった……」
安心から脱力し、少し倒れそうになるも、瞬時に支えてくれる。
「非常に
ボクにだけきこえるよう、小声で囁く。つまり処分されることは確定と。
「おや、失礼致しました」
この人怖いよ……。
場所は変わって会場内。見覚えのある嫌いな吸血鬼が、中身のないスピーチをしている。お、アレ美味しそう。
「これがバイキング形式……」
「ビュッフェ形式っていうんだよ~」
2人の元へ戻ると、アカネが結構な量を皿へよそっていた。食べきれるのかな。
「そこの人間さん、ちょっと血を吸わs……なんでもありません。失礼しました」
あぁ、またか。さっきからモモカに何度か
「モモカさんかなり狙われてますね……」
「吸血鬼って、若くて
「言われてみれば……同級生の血も、女の子の方が美味しかったです」
味を思い出し、えへへと嬉しそうにするアカネ。モモカは吸わせんが?
「ハクちゃん、どうにかしてよ〜」
「ってもなぁ、チョーカー以外は手段ないよ?」
「うちがボディーガードやりましょうか?」
「ボクのが知名度高いから、ボディーガード向いてると思う」
「それはそうですけどぉ……」
意味のなさそうな作戦を考えていると声がかかる。
「道草くってんじゃねぇぞハク。てめぇも
はて、喋るとな?
「ここに来た目的忘れてんじゃねーぞ、アホが」
アホとは
「えっと、うちのことでしたよね?」
「おう、正解だ
あーはいはいはい、思い出した。ん? 待てよ?
「わざわざ、ボクがアカネを紹介しなくても良くないか?」
「てめぇのポジション考えろクソガキが。
はい……。あー帰りてー。
「久々の
低予算CGみたいな薄ら笑いを受かべる、
「あんたに言われなくてもできるよ」
「そうか、ならいい」
だから集まりなんて嫌なんだ。
軽い深呼吸をして、気合を入れる。
「ご紹介に
ドレスの端を軽く摘まみ、軽く持ち上げ挨拶を行う。名乗る際は心の中で
「経緯は
ボクの発言に吸血鬼達がざわつく。そうなるのも仕方がない。これまで、子供の吸血鬼はボクだけだったのだから。
現代の吸血鬼は、血が濃くなり過ぎ、子供を成すことが難しくなっている。人間と結婚しても、吸血鬼が生まれることが珍しい。また、寿命の差からも、結婚することは
「みなさん落ち着いてください。まだ話は終わっていませんよ」
そういうとざわつきが減る。よしよし。
「彼女はこれまで、人間社会で生きてきました。我々にも気づかれない様に」
吸血鬼達から
「ご紹介させていただきます。私の友人、
袖に居るアカネへと視線を向ける。ここまでやれば、ボクも面倒な役割から解放され……待って、アカネいないんだけど。ど、どこいった!?
袖の奥でモモカが両手を合わせ、ごめんのポーズをしている。つまり戻るまでボクが何とかしろと、さっきの前振りで? 冗談キツイって。
「はぁ……」
溜息だけが口から漏れる。
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