第2話 お姉ちゃんに任せなさい(ドヤァ)
月乃と裸で抱き合って。おでこをくっつけて、微笑んで。荒くなった色っぽい息を整えながら、小鳥みたいなキスをしたり。
そんな俺と月乃の穏やかで幸せで、何よりも甘やかな時間は、いとも簡単に終焉を迎える。
そう、月乃が時計を確認した事で。
「うわぁぁぁあああぁぁぁ!時間がぁぁぁぁあああぁぁぁ‼」
「お姉ちゃんに任せなさい(ドヤァ)」
「うるさいっ!」
「はいはい。さっさとシャワー行く」
月乃は『うー』なんて唸りながら小走りでバスルームに向かう。もちろん一糸纏わぬあられもない姿で。
九歳年上のお姉さんのはずなのに、ちょっと可愛い所があって。特に俺が絡むと、途端にポンコツにまでなってしまったり。本当はしっかり者で、スタイルも顔も美しい月乃が俺にしか見せないそんな姿は、独占欲と庇護欲を同時に掻き立ててくる。
きっと昔の俺も、月乃にそう思われていたんだろう。よく天使だの妖精だのと言って、月乃は『誰にもわたすものか!』と悶えていたから。
実際、俺は月乃の庇護下にある。……それが義務感からじゃなきゃ良いけど。って言うのは、ずっと抱えている俺の悩み。愛情を疑うつもりは無いけれど。溺愛されているとも思うんだけど。今でも?と聞かれると、少し怖くなる。
俺は床に落ちてしまっている自分のナイトガウンを羽織る。クローゼットからバスローブを取り出して脱衣所に持っていく。
「つき姉ちゃん、バスローブ置いとくからね。朝ごはん食べながら準備できるようにしとくから、そのままパウダールームに来て」
「うん。わかった。ありがとね祈」
「気にしないで。こちらこそ、なんだから」
バスルームの扉の向こうから聞こえるのは流行りの歌だろうか。月乃の機嫌よさげな歌声が俺の負い目を慰めてくれた。
月乃は『ありがと』なんて言ってくれたけど、もっと不遜でも良いと思う。救われているのは俺なんだから。
泣いてしまう程に月乃が欲しい、なんて。そんな俺の気持ちに応えてくれたのは月乃自身で。浴びているシャワーを止めて飛び出して来るくらいの勢いで。
そんなの嬉しすぎて、また泣いてしまう。
でも……嫌じゃ無かったかな……。あんなに楽しそうにしてくれているんだから、きっと大丈夫、だとは思うけど。
それでも冷静になると、不安になる。果てた直後は幸せでいっぱいなんだけど。
子供だった俺に手を出してしまうほどのショタコンの月乃。
でも、今の俺は月乃よりも背が高くなって、体つきも子供のそれではなくなっている。
女顔で細身だから、男らしさからは程遠いけれど。それでもそれなりに鍛えているし、『ヒョロガリ』とか言われるほどではないはず。
だから余計に自己管理された、スレンダーな女性の様に見られてしまうのかもしれないけれど。
それに、昔は『朝顔のつぼみ』みたいだった俺のは、『農夫が神様にお願いしたモノ』くらいに成長してしまった。
体育の着替えでボクサーパンツのふくらみを皆が二度見してくる。『お前、その顔でそんなのついてんの⁉』といった声まで聞こえてくる。
そんな所だけ雄々しくても、俺だってどうしていいのか分からない。月乃だけに好かれていたいのに、月乃はきっとこんなのは好みじゃないと思うから。
だから、事実として『ショタじゃなくなった俺』は、月乃に『これからの俺』を好きになってもらわないとダメで。
月乃のために。お姉ちゃんのためになら、俺はなんでも出来るから。
だからせめて今朝のご飯を『おいしい』って言ってもらえるように頑張ろう。
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