第5話 自動販売機
自動販売機っていろいろありますよね。
ジュースとかビールとかカップラーメンやおにぎりやたこ焼きなんかもあります。
新聞もあります。
今はまったく見かけませんが、「本」の自動販売機って覚えていますか…?
文部省非推薦のクラビアばかりの本の自動販売機。
あったのです、母校と地下鉄の駅の間に。
あれで「本」を買っている人、みたことありますか…?
おそらくないですよね。
僕はあります
※※※※※
「ジャンケンだ!」
いつものメンバーでジャンケンをします。
その自動販売機から10メートルくらい離れたところで。
なんかジャンケンってこのころからいいイメージがないな…。
詳しくは拙作「ヨットの上で…(参) 第6話 ジャンケン大会」をお時間のある方はご覧ください。
負けたくない…負けらない戦いが今ここにある…
「ジャンケンポン! 」
斎藤が負けました。
「嫌だな…」
そう言ってからサイフからお金をだします。
そして例の自動販売機に行きます。
硬貨をいれます。
そうは人通りがないとはいえ…恥ずかしいですよね、これって。
「ヨッシャー、次! ジャンケンポン! 」
伊藤が負けました。
「マジかよ…」
しぶしぶお金を握り、走って自動販売機まで行き走って帰ってきました。
走りたくなる気持ち、わかります。
「次は勝つぜ…」
残念ながら伊藤がまた負けました。
これ、何回か続けますといくらかになり本が買えます。
僕も負けたことはあります。
あまり近くでじっと見たことがなかったので
(近くに立つことも恥ずかしいですから)
このさいによく見ました。
外国の人が好きだとか、漫画がいいとか、いろいろな“趣味”をお持ちの人に向けて多種の本が取り揃えてありました。
「やっぱり恥ずかしいね…」
僕は正直に言いました。
「でもよ…不思議なもんでさ…」
制服を着てなければとても高校生には見えない成田がこう言いました。
「慣れるとたいしたことないんだよ…俺なんか本屋で普通に買えるぜ…」
だったらみんなでここで買わなくても…。
まあ、ワイワイいいながら買うから面白いんだけれどね。
本当、僕らはどうしようもない男子高校生でした。
*****
おそらくこのお話を読んで頂いている方からご質問があると思います。
そんな時間をかけて本を買っている間に別の人が買いにこないのか…と。
お応えします。
真昼間にそんな本を買いにくる人はいないので大丈夫なのです。
*****
「ヨッシャー、次が最後だ! ジャンケンポン! 」
負けたのは斎藤でした。
「マジかー!」
斎藤はなぜかニコニコしながら叫び、
「よかったー」
僕はかなりほっとして言いました。
最後が一番恥ずかしいです。
「本」を持って来なければいけません。
恥ずかしいですよね。
運悪く女子高生なんかに見られたらね…。
もう立ち直れません。
でもそのかわり「好きな本」を選べます。
これはいい役目です。
そのあとみんなでその本、回し読みというか回し見するわけですからね。
斎藤、恥ずかしがりながらも笑顔で帰ってきました。
「どんなのにしたかな…俺はナイスバディーの金髪がいいな…」
「そうか…俺は日本人でいいんだがな…」
成田も伊藤も趣味はあるんですね。
斎藤、ビニールに入ったその本を僕らに見せました。
「ああ…」
僕も含めてみんなが一斉にがっくりしました。
そうだ、斎藤の趣味は…
「斎藤、こんなロリ系お前しか見ないだろう! 」
「いいじゃん、別にさ…かわいいじゃん」
あいかわらずニコニコしている斎藤。
ぶれないな…たいしたものです。
個人の趣味ってありますから…
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