第4話 学級文庫のような
高校の教室の後ろ側には個人のロッカーが並んでいました。
錠前を買ってきて自分で付けるタイプのロッカーですね。
僕は教材や体育着などを入れていました。
人数分以上のロッカーが当然あります。
荷物の多い部活にいる生徒が勝手に二つくらい使っていました。
別にね…それはいいのです。
それでもあまっているロッカーがいくつもありました。
そこの扉は開けっ放しで、たいてい本が入っていました。
ジャンプ、サンデー、マガジン、ビッグコミックなど普通に入っていました。
さらにBOM、BEPPIN、デラベッピン、アクションカメラ、プレイボーイ等々、当時の男子高校生のバイブルが何個かのロッカーにそれこそ山のように積み重なって入っていました。
読み終わったというか、読むものではないので、見終わったものをそこに置いたり、そこから借りていったりね…。
「斎藤、お前の趣味って俺には合わないんだよな…」
成田が小柄な斎藤に言っています。
ロッカーの本をいくつか物色しています。
「ロリっぽいんだよな…」
もう誰がどの本を入れたかがわかるくらいになっていました。
個人の趣味ってありますから…。
そういって手に取った雑誌をロッカーにもどし、他の本を見る成田。
「いいじゃん、別にさ…かわいいじゃん」
ちょっと拗ねている斎藤。
個人の趣味ってありますから…。
「堀ちゃんは…? なにかいい本があったら持ってくるよ…」
僕に訊く斎藤。
そうゆう本を貸し借りするくらい、みんなフランクなんです。
男子校っていいでしょ。
彼も付属からきましたね。
みなさんお金持ちでそんな“趣味”の本を好きなだけ買うくらいのお小遣いを持っていました。
「いや…俺もどちらかというとそっちじゃなくお姉さまのナイスバディーが好きだからな…」
「そうか…」
「初めて買った写真集って河合奈保子だもん」
聖子ちゃん派と奈保子ちゃん派、どっちと訊かれれば、
「奈保子ちゃん派」
でした。
でも歌は聖子ちゃんかな…。
見た目は断然…奈保子ちゃんです。
理由はご想像におまかせします。
このロッカーの本達を僕は「学級文庫」と思っていました。
文部省非推薦の本ばかりでしたけれどね。
授業中、小テストなんかのさい、静かな教室内を先生が歩きます。
確かこの学校出身で母校の教師になった体育教師みたいな体格だが社会科の大畑先生でした。
ロッカーに目がとまります。
中には文部省非推薦の文字よりグラビアばかりの本が山積みされています。
先生、いくつか手にとって眺めています。
数ページめくって首をひねっています。
「なんだお前ら…!」
不機嫌そうな声がしました。
怒られるよな…普通。
「おとなしいのばかりだな…消されてるしな…」
何が消されているかはあえて書きません。
老舗飲食店の跡取りの最上が机から顔をあげていいました。
「先生! わかりました、次はもっとすごいのを用意しておきます」
「オウ! すっげえのだぞ! 」
男子校って面白いでしょ。
「宿題だぞ! 」
宿題だそうです。
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