メイドたちの噂話 その2



 ねえ、最近のマグダレーナさま、どう思う?

 そうそう、王家に連なる公爵家の令嬢だけあって、気難しいお方。

 いえ、わがまま放題なお嬢さまよりは、ずっといいけれど。

 近頃は、婚約者のルイスさまがアルティさまにご執心じゃない?

 でも、マグダレーナさまはアルティさまの指導役で、月寮パンシオン・リュンヌでは寮生として生活を共にされていらっしゃるの。

 なんというか、やるせないわよね。

 アルティさま、いじめられていたら、どうしましょう。


 ……そうね。

 マグダレーナさまは、そういうお方ではないわよね。

 わたしたちメイドにも、気を遣ってくださるし。

 アルティさまみたいに直接お礼を言ってはくれないけれど、それがふつうだもの。

 基本的には、お付きのメイド……マドレーヌ家から連れて来た、二人のメイドがお世話をしているから、わたしたちはあまり呼ばれないし。

 うん、今年はわがまま放題なお嬢さま、少ないよね。

 月寮のお二人が節度のある生活をなさっているから、抑止力っていうか、あまり大っぴらに騒げないのでしょうね。

 ほら、入学歓迎パーティで水をかけられた二年のお嬢さまいたでしょ。

 派閥を潰され、取り巻きを失い、完全に孤立して……体を病んだことにして実家に帰っちゃった、あのお嬢さま。

 みんな、ああはなりたくないのよ。


 アルティさまもマグダレーナさまも、お茶会には……というか、婚活には興味がないみたいだし。

 眠れる獅子を起こすべからず……ちょっかいを出さなければいいだけ、と判断するのがふつうよね。

 月寮に入居するご令嬢さまがたは、代々、月寮で夜な夜な豪奢なお茶会を開いたものだけど、今年はそれもないし。

 参加するのは、第三王子さまのお茶会だけ。

 高貴な方だから、断れないだけかもしれないけど。

 ……そういえば最近は、平民のレベッカさまもお呼ばれしているみたいね。

 わたし、あの方は嫌いじゃないわよ。

 態度は偉そうだけれど、働くことの大変さを知っているし、気安く声をかけてくださるし、それに……うん、わたしもビスキュイ商会のおくすりを、安く譲っていただいたの。

 手荒れに効く軟膏をね、調合してくださったの。

 悪い人じゃないのだけれど、それだけに、ちょっと心配よね。

 平民なのに王子さまたちに認められているなんて、まわりのご令嬢さまがたが、いい顔をしないのではないかしら……?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る