第10話 ケーキ

最初は、とっとと終わらせて家に帰ろうと思っていたが、補講はなんと、英数国の3科目だった。

「うちの学校は、塾いらずでいいぞ!」

と、先生が言っている。ありがたいような迷惑なような。でも、補講が始まってみると、めちゃくちゃ面白かった。先生が最高なのだ。

「君たちでも分かるような、とっておきの授業をしてやろう。」

と言って、小学校の単元からやり直させてくれる。そこまでやられれば、流石に俺でも分かる。


補講が終わる頃、時計は18時半を指していた。慌てて、隼人に、

「ごめん、今終わった。急いで帰るわ。」

と、LINEする。

「雄馬、俺らとカラオケ行くだろ?」

こいつらとカラオケ行ったら、絶対面白いな。でも俺は、

「めんご。これから、隼人とケーキ食べるから。」

「なになに、お前ら、スイーツ男子なの?」

「まあ、甘いものは好きだけど、今日は隼人の誕生日なんだよ。」

「おお!おめ!俺らもなんかしようぜ!」

と、矢野も鎧塚もまだ隼人と話したこともないくせに、動画を2人で撮り始めて俺に送ってきた。

「これ、隼人に送っといて。」

「おけまる〜。」

すると、隼人からLINEが返ってきた。

「おお!ありがとう!と伝えておいて!ケーキなんだけど、お母さんもお父さんもまだ帰ってきてなくて、まだケーキはうちにないんだ。だから、ゆっくり帰ってきてね。」

と、書いてあった。そして、それを読んだときに、俺は、本当にケーキを楽しみにしていたんだなと気づいた。ケーキはもちろんだけど、家族と仲良く机を囲むことにずっと憧れていたんだと思った。


「矢野、鎧塚、ちょっとだけならカラオケ行けるぞ。」

「よっしゃー!」

俺たちは、学校のすぐそばのカラオケに入った。みんなてんでバラバラなものを歌って、とても盛り上がった。ただ、思ったより盛り上がったので、すっかり時間を忘れていた。

「え、もう20時?やば、急いで家帰るわ。」

「じゃ、俺らももう帰ろうか。」

慌ててスマホを見る。LINEの通知はない。俺は、急いで家に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る