第5話 ノイキャン
新しい家は、俺と隼人の部屋が別にあった。本当に、よかった。俺も隼人もそこそこ背が高いし、子供部屋みたいに二段ベッドとかだったらどうしようとか、俺の机の隣に隼人の机があったら嫌だとか、ずっと心配していたからだ。
部屋に入って、ベッドに寝っ転がってサッカーのゲームをやっていると、机を叩く音がした。
「誰?」
「俺だよ。」
隼人の声にしか聞こえなかったので、俺はそのまま無視してゲームを続けていた。
「お母さんの作ったおにぎりあるけど。雄馬の一押しのツナマヨだけど。」
俺は、おにぎりに釣られ、あっさりとドアを開けることになる。
「サンキュ。メシは受け取るけど、お前は絶対部屋に入れないからな!」
「それでいいよ。ただ、部屋の中どんな感じか知りたかっただけだから。」
すっかり策中にハマってしまった。俺は、隼人にプライベートなことを知られたくない。でも、俄然、俺も隼人の部屋が気になってきた。でも、整理された部屋で、落ち着いて机に向かっている隼人像しか想像できなかったため、見に行くことがはばかられる。
「雄馬もノイキャン好きなんだな!」
「え、お前も好きなの?」
「俺の部屋にもノイキャングッズあるよ。見に来ねえ?」
ノイキャンとは、ノイズキャンセラーという、ドラムとギターボーカルの女子2人組のツインポップバンドだ。日本人のギターボーカルと魔法使いのドラムという設定で、ライブにも行ったことがある。
「・・・行く。」
どんなグッズがあるのかと、内心わくわくしながら隼人の部屋へ。ドアを開けると・・・。
「お前の部屋、最高だな!」
「だろ?」
ノイキャン仕様の部屋で、ギターまで置いてある。
「お前、ギター弾くのか?」
「ノイキャンの曲を弾きたいなと思って、習い始めたばっかりだよ。やっぱり、ノイキャンのモモちゃんのギターは難しいね。弾ける気がしないよ。」
「そりゃあ、モモちゃんはレベルが違うから。お前、よくそんな無謀なことするな。」
「だって、挑戦するのって、楽しいじゃん。将来、バイト頑張ってモモちゃん仕様のギターもゲットしたいんだ。」
宇宙人と会話している気がした。
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