第3話 帰る家

入学式も終わり、家へと帰ろうとしていると、隼人が声をかけてきた。

「雄馬、帰ろう。」

「家って、どっちの家に帰るんだ?」

「あ、確かに。」

「ちゃんと聞いとけよ!」

「めんごめんご。」

コイツって、頭いいんだか馬鹿なんだかよく分からないな。

「写真、結局撮らなかったね。」

「お前は嫌じゃないの?」

「え?何が?」

「何、とぼけてるんだよ。」

「あ、ごめん。俺の父さん、母さんと離婚したんだよ。だから俺は前の母さんのことは忘れるって決めたんだ。新しい母さんも大事にしたいし。」


前の母さんが生きていて、しかも元気に暮らしていれば、そういう風に思えるのかもしれない。でも。


「俺の父ちゃん、病気で死んだんだよ。だから、俺の中で、まだ父ちゃんは変わらなくていい。まだ、父ちゃんが死んだことすら受け入れられていないのにさ。」


すると、隼人は静かにこう言った。

「受け入れなくていいんだよ。俺だって、本当は受け入れられてないよ。」

「・・・そうなのか?」

「うん。」

「でも、受け入れられてなくても、受け入れているふりをしていれば、本当に受け入れられる日が来ると思ってるんだ。」

「隼人、お前って、本当に馬鹿だな。」

「お前に言われたくねえよ。」

2人で顔を見合わせて、あははと笑った。


さて、どこの家に帰ろうか。とりあえず、両方の家に当たってみよう。

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