第2話 説得
「まあまあ、今日は入学式だし、写真撮らない?」
と、母ちゃんが言った。
本当だったら、父ちゃんがここにいて、恥ずかしいけど、3人で写真を撮ったはずだ。そのことを考えるだけで、胸が苦しくなる。
「ちょっと無理だわ。」
俺は、3人を残して、校舎へと入っていった。
席に座って、ひと息ついていたが・・・
「雄馬、俺と同じクラスじゃん。」
「お前・・・」
隼人が、ちゃっかり俺の前に座っていやがる。そうだ、席順はあいうえお順だった。
逃げても逃げても追いかけて来るゾンビみたいなやつだな。そう思うと、ちょっとだけおかしくて、ふっと笑ってしまった。
「なんか笑ってるけど。」
「なんでもねえよ!」
「写真、絶対撮ろうな。将来、初めて家族になったのに写真がないの、寂しいじゃん。」
そういうんじゃない。まだ、俺はこいつらと家族になりたくないんだ。父ちゃんの思い出が、実は前からずっと薄くなってきていた。それが完全になくなってしまうのが嫌で、俺はそっちの方が寂しい。
「ごめん、もうちょっと考えさせてほしい。」
隼人は、黙って聞いていた。
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