第6話

 


 麗らかな昼下がり。

 そんな街のお洒落なオープンカフェで、ピシッと決まったパンチパーマの男性が優雅にコーヒーを飲んでいた。

 キャラメルマキアート的な甘めのコーヒーらしきものを啜りながら、手に持っていたドス(UR)を恍惚とした表情で見つめている。

 やべぇ、やべぇ奴がいる。

 俺の率直な感想だが、カフェでドスを見てニヤニヤする男が居るのに周りは違和感を覚えないのだろうか?

 いや、実は彼がゲームのモブの可能性がある。街人がスルーしているのが何よりの証拠だ。

 そしてフェスの当たりをプレイヤーに見せつける事により射幸性を煽っているのだろう。運営の浅ましい魂胆が丸見えだぜ!

 ならば俺には意味を成さない。何故なら任侠フェスを蹴って通常の11連を回し、あまつさえそっちの最高レアを当てたのだ。

 とりあえず、なんか話しかけるのは嫌なので他のカフェに向かおうと前を通ろうとした時だった。

 ヤーさんの独り言が意図せず耳に入り、俺は足を止めてしまった。


「まさかこの世界に来て念願のドスが手に入るなんてなぁ。やっぱりレア度が高いとテンション上がるわ。おい姉ちゃん、俺のシナモンロールまだかよ!!」


 聴きたくなかった。

 これ、どう足掻いても僕と同じ転移したプレイヤーじゃんかよ。しかもシナモンロールて、シナモンロールて!!

 甘いモン食わずに塩辛とか食ってろよ! と、心の中で思い切り突っ込んだがとても口には出せなかった。

 とりあえず少し距離を置いて、こそこそと妖精を問い詰める。


(……おい! この世界って、ユーザー同士が戦う事ってあんのか?)

『厳密にはありませんね。ギルド的な組合はありますが、大型のレイドボスを倒す事が目的であって、人間同士がどうとかはありません……ですが』

(ですが? なんだよ歯切れ悪いな)

『転移する事で元のゲームより自由度が上がっています。言うなれば、スーパーマ◯オからGT◯になった位の変化ですかね』

「違いすぎんだろ!? なんで横スクロールのゲームから何でもありのギャングもんに昇華してんだよ!! じゃあ何か? ユーザーの気分次第で、予期せぬ展開に縺れ込む可能性もあるってか!?」

『ですね』


 ですねじゃねえよ、ですねじゃ。

 いや、本当にそれならヤバイぞ。マジでガチャから強アイテムとってランク上げないと死活問題に直結じゃねぇか。

 慌ててスマホからメニューを開き、そしてガチャのページを開いた。


「こうなりゃ、やる事は限られる。なら……見せてやる!」


 廃課金に抗う術は皆無では無い。俺は今までに培ったソシャゲ脳をフルで動かしてみせたのだった。

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ログボしかとってないクソゲーに転移したので無双しようと思います 名無し@無名 @Lu-na

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