第4話
前回までのあらすじ。
ガチャを回そうとしたらトチ狂った『任侠フェス』なるものが開催されており、普通の武器を欲したら少しのレアとゴミとバグで石を無駄しました。
「……虚無だ」
文面にすると大概である。
このゲームはどこまで人をコケにすれば気が済むのだろうか。
ドスは俺の手の中でずっしりとした重さでリアリティを突き付けてくる。こんなので刺されたら一発だろマジで。
『良かったですね、これで序盤なんて楽勝ですよ』
「良かねぇよ、ファンタジー感ゼロだろコレ。ドスで敵を倒す勇者とか見た事ねぇだろ」
『固定観念はこの際捨ててしまいましょうよ。強ければ正義、それがソシャゲです。積み上げた努力は決して廃課金には抗えない、そんな無慈悲さはご存知でしょう?』
「……酷い事を言いやがる」
しかしそれがソシャゲ。無課金プレイヤーには抗えない壁が存在するのは事実だ。
プレイング? プレイ時間?
そんなもの、課金の前では無意味に等しい。それがリアルってもんだ。
まあ例外として一部の類稀なるゲームセンスを持っていれば課金の有る無しに関わらず勝負になるゲームも存在するのは事実。
たが、その大半はジャブジャブ課金する奴には勝てないものが多い。当たり前だ、それが運営の儲けに繋がるし、ゲームを存続させる為にはユーザーからの課金は必要なのだから。
『津田さん、とりあえずクエストしませんか? スタミナが溢れて勿体ないですよ?』
「スタミナ?」
スマホで自身のページを確認する。そこには、『100/30』とスタミナなるものが表示されていた。分母を超えているのは今回のログボで貰ったスタミナが上乗せされているのだろう。
『ページ上のお好きなクエストをタップして下さい。それでスタミナが消費され、モンスターに出会えます』
なるほど、しかしチュートリアル終わりでクエストページはまだ最初のエリアだ。
日替わりで曜日ダンジョンや降臨的なクエストがあるかは知らないが、とりあえず解放する為には初期クエストを捌く他ないらしい。
「えっと、じゃあ『はじまりの草原1-1』にするか、スタミナの消費は2っと」
すると、目の前に何かが突然現れた。
「!? ……モンスターかッ!?」
「……きゅ?」
「え……?」
そこには小さな白くて丸い、言うなればウサギをさらにデフォルメし、何ならゲームのマスコットキャラにした様な可愛いモンスターが現れた。
「なぁ、まさかこれが敵モンスターなのか?」
『はい』
「マジかよ……」
クリクリの赤い目。そしてフワフワで丸々な身体。一際大きな耳をぴこぴこさせ、愛くるしさで溢れかえっている。
「倒せねぇよこんな小動物みたいなの!! もっと薄汚いゴブリンとかスライムとかいるんだろ!?」
『初心者用のモンスターですからね。とりあえず戦う事に慣れてくれと、社長からの優しさですよ。基本的に無抵抗なので一思いにどうぞ』
鬼畜、圧倒的な鬼畜!!
こんな可愛いモンスターは卑怯だろ。モンスターと言われなければ主人公のパートナー的なポジションにだって見えなくもない。
それを倒せと言うのか? この僕に!?
『しっかりして下さいよ津田さん。あのポケ●ンのピカ●ュウだって序盤の森でエンカウントするじゃないですか。津田さんだってどうせ何の躊躇もなく、ひっかいたり、火の粉浴びせたりしてたんでしょ?』
「いつのバージョンの話をしてるんだ! あと僕はゼニ●メ派だからな!!」
どこまでも不毛な言い争い。
しかしこの可愛いモンスターは何もする事は無く、僕と妖精のやり取りを見ている。やめろ、そんな目で僕を見るな! せめて牙を剥いて襲い掛かってきてくれ! 罪悪感で潰れちゃいそうだ。
『因みにですけど、この「白玉ウサギ」は攻撃してきません。なので、倒さないと永遠このままですよ?』
「くッ……腐れ外道共が!」
俺は血涙でも出るんじゃないかと思うほど悔しさに包まれながらドスを握り締めた。
やがて、その刃先を愛くるしさを持ちながら『モンスター』とカテゴライズされてしまった生き物に向ける。
「すまねぇ!」
「きゅ? ーーーーンギャアアオオオオアアアアアアアアアアいうあああああああ!!!」
「断末魔のクセぇぇえええええ!」
見た目と相反して後を引く断末魔。
いや、このお陰で少し罪悪感が晴れたむしろありがとう。
『やりましたね津田さん! この調子でドンドン行きましょう!!』
こうして俺はドスを振りかざしながら、数時間後には『ランク23』に到達したのだった。
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