田舎での門出を祝う


「…………あれ、寝ちゃってのか僕。ん? 確か芝生の上で寝てたはずなのに……どうしてベッドに?」


 カイルが目を覚ますと、どういうわけか彼はベッドの上にいた。さらに窓の外を見ると、あたりはすっかり暗くなっている。眠ってしまう前の記憶では、確かに芝生の上で眠っていたはずなので、なぜベッドの上にいるのか不思議でならないようだ。


「あ、カイル様起きた! おはよーカイル様!」


 彼が目を覚ますと、横で座っていたイズナが嬉しそうに満面の笑顔を見せる。どうやらカイルが寝ている最中、彼女が近くで見守ってくれていたようだ。


「あれ、イズナ。僕はどうしてここに?」


「カイル様、芝生でお昼寝してから全然起きなかったから、イズナとミアでベッドまで運んだの! カイル様、すっごく疲れてたんだね」


「そっか……。ありがとう、イズナ」


「どういたしまして! そうだ、今ミアが美味しい料理作ってるから、カイル様も早くいこ!」


「ほんとに? それは楽しみだな」


 ミアの作る料理が本当に美味しいことをカイルは知っているため、二人はワクワクしながら食卓まで向かう。その途中、料理のいい香りが漂ってきて、イズナのお腹が素直にぐーっとなってしまうほどに、二人ともお腹が空いているようだ。


「あ、カイル様! お目覚めになられたんですね」


「うん、ありがとうミア。僕のことをベッドに運んでくれて、料理まで作ってくれて」


「そ、それは……カイル様のことを思えば当然です! そ、それに私……か、カイル様がお昼寝している時に……ちょ、ちょっといたずらしちゃいましたので、そのお詫びもかねて……」


「いたずら? 何かしたの?」


「あ、え、えっと……」


「カイル様のほっぺたに、イズナとミアでチューしたの!」


「い、イズナ!?」


 にししと笑いながら、イズナに自らがした行いを暴露されてしまったミアはとっさに顔を隠して頰を赤らめる。ああ、あんなことをしたってカイル様に知られちゃったら幻滅されちゃうかな、どうしようと思いながら。


「ははっ、そっか。でもそれぐらいなら全然構わないよ」


 だがカイルはキスされたことに多少照れた様子は見せているものの、大きく動揺する様子は見せていなかった。


「ぶー、もうちょっと照れてよカイル様」


「結構照れてるんだけどなぁ。まぁ、寝てる時にされたから、いまいち実感がわかないのか——!?」


「……ちゅっ。……そしたら、今しちゃいます」


 もっと自分の思いを知ってほしい、そう思ったミアは大胆なことに直接カイルのほっぺたにキスをした。それには流石のカイルも驚いて、そして頰を真っ赤に染めてしまう。


「わーミアの抜け駆けずるい! 私もしちゃう!」


 そしてそれを見たイズナはぷくーっと頰を膨らましたあと、同じくカイルの頰にキスをした。流石に美少女二人からキスをされてしまったカイルはびっくりして、つい呆然としてしまう。


「び、びっくりした……。二人とも、大胆すぎないか?」


「だ、だって……そうしないとカイル様はちゃんと私の好意をわかってくれないかと思って……ご、ごめんなさい!」


「えへへ〜それぐらいカイル様のことが好きだってことだもん!」


「全く……。あれ、そろそろスープ出来たんじゃないか?」


「あ、本当ですね。じゃあ、ご飯にしましょうか」


「わーい!」


 それから三人でご飯を食べる準備を済ませて、食卓にはミアが作った豪勢な料理が並ぶ。どれもこれも美味しそうで、カイルはついヨダレを垂らしてしまいそうになるぐらいだ。


「それじゃあ、ここでの門出を祝って……いただきます!」


「いただきます!」


「いただきまーーす!」


――――――――――

新作です! お試しで書いてみました。人気が出れば続きます。

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