田舎でどんなことをする?


「カイル様は、ノースユルミについたら何をされるのですか?」


 馬車に揺られながら、のんびりと目的地まで向かっている最中。ミアがカイルにそんなことを聞く。


「そうだね……うーん、何をしたらいいかな?」


「え、何も考えていなかったんですか!?」


「最近はずっと仕事ばかりだったからなかなか思いつかなくてね。ミアとイズナはどんなことがしたい?」


「イズナは美味しいご飯がいっぱい食べたい!」


「ははっ、それは確かにいいね。僕も久しぶりに料理したいし、途中で食材とか買って行こっか」


「うん! カイル様の料理美味しいから、いっぱい食べたいなぁ〜」


「それは嬉しいね。ミアは何かある?」


「わ、私は……カイル様と一緒にいられる時間を増やしたいです。あ、あとは……今まで、カイル様は色々とお忙しかったと思いますので、その分いっぱいゆっくりしてもらえるように頑張りたいです」


「僕のために色々としようと思ってくれることはありがたいけど、ミア自身がしたいことをしていいんだよ?」


「わ、私はカイル様にいっぱい尽くしたいんです!」


 ぐいっと顔をカイルに近づけて、これ以上ないぐらい真剣な表情を見せながらミアはそう宣言した。彼女にとって、カイルに尽くすということは好意を寄せている相手に好かれたいという思いがあってこそ。だから彼女自身にも悪いことは何もないのだ。


「そ、そっか。それなら……ミアにいっぱい、頼らせてもらうよ」


「はい!」


「イズナともいっぱい遊んでよ、カイル様!」


「もちろんそのつもりさ。よし、街に付いたしここで買い物を済ませていこうか」


 こうして彼らは街に着いたのち、食材やら生活に必要なものを一通り揃えてまた目的地に向かっていったのだった。


 その一方


「おい聞いたか……リース様がカイル様を追い出して軍師になったって……」


 城の中ではすでにリースがカイルに代わって軍師になってしまったことで話題が持ちきりだった。直属の部下である兵士たちは顔面蒼白になりながら、ことの事態を互いに情報共有し合う。


「き、聞いたよ……。ど、どうすんだよ。あの短期短足単細胞じゃ軍をまとめられるわけないじゃん」


「しかもカイル様、ミアとイズナを連れていったらしい。リース様怒ってで何人かの兵士に追わせてるらしいぞ」


「……追わせた兵士、帰ってくるかな?」


「…………俺だったらそのままカイル様に着いてく」


「だよなぁ……」


 城の中ではすでにカイルがいなくなってしまったことで悲壮感が漂っているものの。リースは全くそんな気配を感じてなどいなかった。


「全く……カイルのやつ、無理やりミアとイズナを連れて行きやがって。自分一人じゃ暮らせない弱虫野郎とはいえ、俺のお気に入りを連れて行くとは許せないな。まぁ、きっとこのリースが城に戻ってきてくれと懇願していると知ったらすぐに戻ってくるだろうがな! さて、それじゃあ俺は軍師らしくこの国を勝利に導いてやるか!」


 ミアもイズナも、自分でカイルを選んだとは全く思っていない彼はそんなたわごとを言いながら、初めて軍師としての仕事に挑むのであった。


――――――――――

新作です! お試しで書いてみました。人気が出れば続きます。

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