天真爛漫なロリアサシンもついてくることになりました


「カイル様、カイル様! そんなにコソコソと移動されてどこに行くの?」


「い、イズナ!? い、今は大きな声は出さないでくれると嬉しいな」


 馬車乗り場まで着いた時、後ろから不意に小さな少女がカイルに元気よく声をかける。彼女は、軍にアサシンとして雇われている「イズナ」。140cmほどの小柄な体型を活かして軍の暗殺部隊で活躍している彼女は、アサシンとは思えないほど明るい性格、そして可愛らしい顔立ちをしている。


 そのため、イズナにもファンはたくさん存在しているらしい。ちなみに、カイルの兄であるリースもファンの一員だ。


「えーどうして? もしかして隠れてどこかにお出かけするの?」


「ま、まぁそんなところかな。だけどイズナ、今日僕が馬車に乗って行ったことは内緒にしておいてほしいな」


「んー……ねぇカイル様。ミアも一緒にいるけど、もしかして二人は駆け落ちをするの?」


 カイルと共にコソコソと馬車に乗ろうとしていたミアを見て、イズナは驚いた表情をしながらそんな質問をしてきた。


「ふぇ!? い、イズナ……そ、そういうわけじゃないよ!」


 駆け落ちというわけではないので、ミアはあたふたとしながらそれを否定する。本当にそうだったらどれだけ良かったか、と思いながら。


「えー。あ、そういえばさっきリースが「俺が軍師になったぞ、ガハハ! だからイズナは今日から俺の専属メイドになれ!」って酷い事を言ってきたんだけど……もしかして、カイル様軍師やめちゃったの?」


「兄様、イズナにもそんな事を言ってたのか……。うん、そうだよ。今日から兄様が軍師で、俺は城を出て行くことになったんだ。ミアと一緒に田舎のノースユルミにこれから行く予定さ」


「そしたら、イズナも付いていく!」


「え!? う、うわぁ、急に抱きつかないでくれイズナ!」


 カイルが城から出ていくと聞いた瞬間、イズナはぎゅっとカイルを抱きしめる。そして、彼女は涙目になりながら自分の思いを彼にぶつける。


「カイル様のいないここなんか嫌! カイル様がパパやママが死んじゃって、いやいや山賊に働かされていた私のことを助けてくれたから、私はここで働いてるんだよ! 私はカイル様にずっと付いていくって決めてるの。だから……私も、連れて行って」


「い、イズナ……」


「カイル様、連れて行ってあげましょう。イズナも私と同じで、カイル様のことが大好きなんです。だから……離れ離れになるなんか、私と一緒で嫌に決まってます」


「……わかった。それじゃあイズナ、一緒に行こう。今まであんまり遊べなかった分、いっぱいあっちで楽しもっか」


「うん! それじゃあ、すぐに準備してくるね!」


 そして、持ち前の俊敏を活かしてイズナはすぐに準備を済ませ、一行は馬車に乗って城から遠く離れたノースユルミに向かって行った。


「楽しみだねぇ、ワクワク!」


「うん、そうだねイズナ」


「……二人とも、近すぎないかい?」


「だっていっぱいカイル様を味わいたいんだもん」


「わ、私も……今までこうできなかったので」


 馬車を運転しているカイルの両隣に、二人は座って体をわざとらしくくっつけている。その様子はまさに両手に花といった感じで、男性の誰もが羨む状況だった。カイル自身はその状況に恥ずかしさを感じつつも、自分を慕って付いてきてくれた二人のことを絶対に幸せにしないとなと使命感を持ったのだった。


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新作です! お試しで書いてみました。人気が出れば続きます。

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