可愛いメイドと共に田舎に行くことになりました


「か、カイル様! ぐ、軍師をやめるってどういうことなんですか!」


「み、ミア!? ど、どこでその話を」


 荷物をまとめて城を去ろうとしていた時、勢いよくカイルの部屋の扉が開く。そしてそこには城の中で一番可憐だと評判な、メイドの「ミア」の姿があった。


 誰が見ても綺麗だと評する金髪に、端正な顔立ち。そして男性の目をつい釘付けにしてしまうほどに魅力的な胸。城中の誰もが、一度は彼女に恋をしてしまうほどに彼女は人気なのだが、一度も男性と付き合ったことはないらしい。


 なぜなら、彼女にはすでに意中の人がいたから。


「リース様が私の部屋に入ってきて、「無能なカイルの代わりに俺が軍師になった。あいつはもう城から出て行く、だからいい加減俺の女になれ」って言われて……そ、それで急いで駆けつけてきたんです!」


「兄様……早速周りに言いふらしているのか。すまない、ミア。兄様が君にひどいことをして」


「そ、そんなのはどうでもいいんです! それよりも、カイル様……ほ、本当にお城から出て行ってしまわれるのですか……?」


「……ああ。戦争はもう優秀な兄様に任せて出て行くよ。僕も、働き続けて疲れちゃったし。だからミア、君とはここでお別れ——」


「そんなの嫌です!」


「み、ミア!?」


 唐突に、ミアがカイルのことを抱きしめる。そして、涙を流しながら彼女は自分の思いを彼に吐き出した。


「私は……カイル様が好きなんです! 昔から誰にも優しくて、常に努力されていて、そして……子供の頃、いじめられていた私を助けてくれた貴方のことが好きです! だから……離れ離れになるなんて、絶対に嫌……」


「み、ミア……」


 今まで仕事に集中せざるを得ない環境にいたため、カイルはミアが自分にそんな感情を抱いてくれていたことに全く気づいていなかった。だからこそ、今ここで涙を流しながらそう訴えてくれたことにびっくりしながらも、その思いを蔑ろにはできないと感じた。


「……ありがとう、ミア。僕のことを大切に思ってくれて」


「わ、私には……それぐらいしかできませんから」


「……正直、まだ僕は君の気持ちに応えられるかはわからないんだ。仕事ばかりしてきて、それ以外考える余裕がなかったから。でも……もしかしたら、君とこれから一緒に過ごしていけばわかるのかも」


「そ、それって……!」


「一緒に行こう、ミア。兄様に君を渡したくないからね」


「あ、ありがとうございます! それじゃあ、すぐに支度を済ましてきます!」


 こうして、カイルは可愛いメイドと共に城から出て行くことになった。一人で行くのは少し寂しいと感じていた彼は、こうなったことについ嬉しさを感じてしまう。


「さて、馬車の準備もするか。あのルートなら戦争に巻き込まれることもないだろうし……ん?」


「準備ができました、カイル様!」


「は、早いねミア」


「カイル様の迷惑にならないよう頑張りましたから! それで、どこに行かれる予定なんですか?」


「ノースユルミ。景色がよくて、静かな田舎だよ。そこは戦争にも巻き込まれてないから、ゆっくりできると思ってね」


「素敵ですね! カイル様もお疲れでしょうから、そこならきっと今までたくさん働かれたぶんお休みできるはずです!」


「ああ、それじゃあ行こうか。兄様にはバレないようにこっそりね」


「はい!」


 そしてカイルは、兄のお気に入りであるメイドのミアを連れて馬車の乗り場まで向かっていった。


――――――――――

新作です! お試しで書いてみました。人気が出れば続きます。

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