大変優秀(笑)な兄様が「お前がいるから真の実力者である俺が活躍できないんだ!大した仕事もしていないお前は出て行け!」と仰るので、僕は田舎で美少女たちと毎日ぐーたら過ごすことに決めました
仕事のせいで寝不足なのに、真の実力者らしい兄様が怒鳴り散らかしてきた
大変優秀(笑)な兄様が「お前がいるから真の実力者である俺が活躍できないんだ!大した仕事もしていないお前は出て行け!」と仰るので、僕は田舎で美少女たちと毎日ぐーたら過ごすことに決めました
倉敷紺
仕事のせいで寝不足なのに、真の実力者らしい兄様が怒鳴り散らかしてきた
「きつい……」
連日軍の指揮を執っている疲れもあってか、世界有数の国家である【リンバード】を統べる王族の第二皇子である「カイル ジェラード」は個室の中で作戦を練りながら弱音をこぼしていた。
彼は現在、隣国の「エバトン」との戦争を繰り広げている祖国の軍隊を率いている。父である国王の体調が優れないため仰せつかった任務だが、国のために彼は昼夜問わず軍師として被害を最小に、そして勝利を確実にもぎ取るために尽力し続けていた。
だが戦争はなかなか終わる気配がなく、カイル自身もだんだん疲労が蓄積され、こうして誰もいないところではつい弱音を吐いてしまうぐらいに追い詰められているのが現状だ。いや、戦争だけならまだなんとかなったのかもしれないが、彼には……いや、この国には……。
「おいカイル! お前、いい加減にしろよな!」
「え……な、なんですか兄様」
突然、カイルの部屋の扉が乱暴に開けられる。そして、疲労MAXの彼に容赦なく罵声を浴びせてきたこの男は、「リース ジェラード」。ジェラード家の第一皇子であり、カイルの兄だ。彼がどうしていきなりこんなことをしたのかというと……。
「いつもいつもお前ばっかり活躍して……俺には何にも仕事が振られない! この優秀でかつ聡明な俺が重役につけないなんて、おかしな話だろ!」
「い、いや、だからそれは適材適所というか……」
クレームを言いにきたのだ。ちなみに彼はこれを一週間に数回はしており、カイル自身も慣れてはいるものの、もううんざりしきっている。
(あんたが使えない……いや、ただの無能ならまだましだけど、被害をさらにひどくする天才だから何も任せられないんだよ……。虚言癖で、見栄っ張りで、不潔で、短気で、単細胞で……みんな嫌ってるの、わかってないのかな)
口ではなんとかそれっぽいことを言っているが、カイルの本音は辛辣だ。だが、それも仕方がないことだろう。実際彼の評判は誰に聞いても悪い。メイドたちの間でこっそり行われている「絶対に結婚したくない男ランキング」でリースは一位になるぐらいだ。
ちなみに、「絶対に結婚したいランキング」で一位なのはカイルらしい。
「いーや、もうその言葉には騙されないぞ。カイル、お前が悪いんだ。お前がいるから俺が活躍できないんだ! 俺はお前の陰に隠れた真の実力者でな、きっとお前に代わってこの国を勝利に導くことができるはずだ!」
「そ、それは……」
絶対無理です、とカイルは言いかけた。実際リースは昔軍の指揮をとったが、敵前逃亡をした挙句、それを虚偽申告して勝利した風に見せかけようとしたこともあったため、そもそも兵士たちにすら信用をしてもらえないのが明白だからだ。
だからどんなに兄から酷いことを言われようが、我慢しようとした。したけれど……。
「だからな、カイル。あとはもう俺に任せろ。大した仕事もしてないで、本当はグータラしてるんだろ? お父様にたまたま気に入られてうまーく地位を手に入れたのかもしれないが、これ以上出しゃばってくるな! 早くこの城から出て行け!」
「大した仕事もしてないのに……グータラ……?」
その言葉を聞いた時、カイルの頭の中でプチっと何かが切れた。グータラ? 僕は毎日昼夜問わず戦略を考え、兵士たちのケアもして、戦地に赴いて戦ったりもしているのに。
それをこのデブクソ野郎の兄、いつも城の中にこもってメイドたちにセクハラをしたり、国の金で高級お菓子を大量に食べていたり、訓練もせずに惰眠を貪り尽くしている奴に! 仕事のことをバカにされ、挙句グータラしていると言われたカイルは、正直怒りで今すぐこいつを殴ってやろうとさえ考えた。
だが、それではこのくそ兄貴と同等になってしまう。ならもう、いっそ……。
「……わかりました。それでは、優秀な兄様にあとはお任せします」
本当に、こいつのいう通りにすることをカイルは決めた。
「おお、やっと理解したかカイル。それでいい、では今すぐ出て行け。目障りだからな!」
「はい、わかりました。では、出て行く準備をしますので、お部屋から出て行ってください」
「おうとも。ガーッははは! これで今日から俺が軍師だ!」
「…………さて、どこに行こうか。ああそうだ、確かあそこならゆっくり過ごせるはずだ」
バカ兄貴に全てを任せてしまったことで、国にとんでもない爆弾を置いてしまうことに不安を感じつつも。これから、ようやく仕事から解放されてゆっくりできることに楽しみを感じながら。カイルは国から出て行く準備を始め出した。
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新作です! お試しで書いてみました。人気が出れば続きます。
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