第12話
「兄さん。一応、情報統制は巧くいっているようだよ」
ラング君が目を開く。テレビや新聞などの報道関係からインターネットまで広く情報を探っていたそうだ。
先日の怪獣も自衛隊の攻撃がじわじわと後から効いて倒せたということになっているらしい。
特殊な眼鏡をかけさせてもらっていた私は別にして、五兄弟の活躍は分からなかったようだ。
どうも真三とカンが攻撃を担い、残りの三人が支援するという役回りらしい。
真三は手から赤い弾丸のものを高速で射出し、カンは直接打撃を与えていた。他の三人は様々な形で怪獣を弱らせていたそうだ。
でも、その時の映像を見ても五人は映っていない。
その後、政府の高官との会談で五人が怪獣を倒したということは一部の人間には認識されるようになったけれども、その事実は秘匿されている。
もちろん、私の存在とその役割もだ。
だから、私の生活は大きく変わっていない。相変わらず健康に気を遣った生活を送っていた。
仕事のストレスが無くなったこともあり、外見は数歳分若返ったと思う。
それとアレだ。
常にイケメンに注視されているというのは最強の美容法だと思う。なんか体から分泌されるんだろうな。
仕事を辞めたことで暇かというとそうでもない。
古文書の分析などから隕石が落ちたとされる地点を特定すると皆でドライブすることになった。
公共交通機関を使ってもいいのだが、この五人が揃って素顔を晒していると騒ぎが起こる。
光学迷彩の応用で姿かたちを変えることもできるのだが、緊急時に備えて無駄なエネルギーを使わないということで、もっぱら車での移動になった。
カンが自動車の運転を気に入っているということもある。
「洗練さはないんだけど、ダイレクトに体に反応が返ってくるのが面白いんだよなあ」
「元が単純だからだろ」
まぜっかえす仁。
双方から同意を求められ間に挟まれる私。かつてない経験に頭がくらくらする。
そんな楽しい日々は、すぐに終わりを迎えた。
辞めた会社からの悲鳴のようなヘルプ要請以外に滅多に連絡のない私のスマートフォンにアケミから連絡が入る。
「久しぶりに会って話をしようよ。私、早織に大事な話があるんだ。んー、ちょっと電話じゃ話せないことなんだよね」
周囲で聞いていた真三が指で丸のサインを出した。
アケミの指定のカフェに出向き、真三と共に店に入る。
先に店に着いていたアケミが席から立った。手には金属製の拳銃のようなものが握られている。
「早織。久しぶり。そして、死になさい」
ためらいもなくアケミは引き金を引いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます