第11話

 テレビで見たことがある総理大臣が大きなテーブルの向う側にいる。

 左右にいるのも見たことがあるようなないような。後ろ側にはダークスーツ姿の目つきの鋭い人が何人もいた。他にも一杯。

 対するこちら側は真三が総理大臣の向かいに座っていた。

 私はその後ろの椅子で真三に隠れるようにして体を小さくしている。

 膝の上にはなぜかラング君がちょこんと乗っていた。後ろはカンが固め、左右にはハンスと仁がいる。

 何かあれば身を挺して私を庇う体制ということらしいが、こうも密着されると意識を保っているだけで精いっぱいだった。

 総理大臣が口を開く。

「それでは要求を聞こうか」

「非常にシンプルだ。我々はこの星に対する侵略行為を可能な限り排除する。見返りとして我々がある物を探すのに全面的に協力して欲しい」

「あなた方の優れた文明があれば我々が寄与できることはほとんど無いと思うが。先日の怪獣もあなたがたの力で撃退できたようなものだ」

「あなた方はこの星を支配する準知的生命体だ。その同意がなければ我々も勝手なことはできない。あなたはこのエリアの代表なのだろう?」

 総理大臣と真三の会話は続く。難しくなってなんの話をしているのか分からなくなった。

 それは良いとして、周囲の人々のうちのいくつかが私に刺さっているのが痛いんですよね。ヒソヒソと囁き合っちゃったりして。

「ところで、そちらの女性は我が国の国民だと思うが」

 おっと、急に私のことが話題になったらしい。

「小林早織。二十八歳。戸籍もあればマイナンバーも発行されている。外国の利益のために行動しているのはどういうことかな? 出所不明の大金で分不相応な邸宅も構えている。我が国のいくつかの法律に違反していると思うがね」

「ほえ。うっそ。私何もしてないし」

 うろたえる私を制して真三が間に入った。

「早織を貴国の法律で追及することはできないと思うよ」

「先ほど我が国の法律は尊重するとの話だったはずだが。彼女は我が国の国民である以上、それに服さなければならない」

「もちろん我々は実力で貴国の法律を曲げるようなことをするつもりはない。しかし、早織は我らアギ皇国の特命全権大使でもある。当然外交官特権は保持していると理解しているが、疑義はあるかな?」

「ううむ」

 総理大臣は返答に窮している。真三はさらに畳みかけた。

「我々の様子から早織の重要さを推測し、コントロール下において交渉を有利に運ぼうというのは……、止めるよう強く勧告するよ」

 一応和やかに会談は終了し、私は車に乗る。

「私が大使ってなんですか? 私そんなものになるって約束しましたっけ?」

「あの場で口にしなかったのは上出来だ」

 雰囲気に飲まれて口をきけなかっただけだけど褒められちゃった。

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