第7話
周囲を見回しながら家路につこうとすると颯爽と真三がやってくる。
「ちょっと何をしたのよ?」
「なんのことだい?」
爽やかな笑みを浮かべた。睨みつけていると笑い出す。
「早織には心身ともに健康になって貰わなくてはならないからね」
さらに問い詰めると先輩社員については最後に白状した。
先輩社員に上司の姿で接近して、かなり厳しく叱責したそうだ。PMへは何をしたのか口を割らなかったが、何か似たようなことをしたのだろう。
「もう。勝手なことをして。働きにくくなったり、首になったら責任を取ってもらいますからね」
「もちろん。でも、あんな職場に忠義立てすることないと思うなあ。早織のことを尊重してないし」
「そうは言っても食べてかなきゃいけないのよ」
「そうそう。食べ物といえば家の中にはほとんど食べ物がないから買って帰ろう」
「給料日前だからお金が無いのよ」
「そう? 確認してみたら?」
あまりにしつこいので道の端によってスマホで銀行口座を確認した。なんと口座の残高が三桁から六桁に増えている。
「な、な、なにこれ?」
「責任を取るというのが口先だけじゃ無いってことの証明」
「使って大丈夫なの?」
「信用して欲しい。私たちの方がこういう技術も進んでいるんだから」
買い物をして家に帰る。
普段は買えない野菜や果物、少々お高いお魚の刺身も買った。なぜか急須と茶葉も買わされる。まあ、何を買ったのかなんか些細なことだ。
イケメンと生活感あふれる買い物デート。周囲の視線が凄い。
買った食材を真三が調理してくれている間に、風呂桶にお湯を張ってゆっくり入浴した。狭いお風呂だったがお湯につかると体の中から疲れが流れ出していく気がする。
風呂から出るのに合わせて料理が並んだ。いつもからは考えられない華やかな食卓になる。
こうなるとお酒が飲みたくなって、冷蔵庫から梅酒ソーダを取りだそうとしたら止められた。
「悪いけど、肝臓が一番ひどい状態なんだ。しばらくは禁酒してもらうからね」
「お酒は私の主食なんだけど」
「それが良くないって言ってるの」
「一杯もダメ?」
「ダメ。代わりにお茶を淹れるから」
真三は手で×印を作る。
「私の生きがいが……」
がっくりと項垂れると妥協案を提案してきた。
「状況を見ながら少量は許可するよ。たぶん、二週間後ぐらいには」
「死ぬ」
「お願いだよ。このままだと兄弟を頼れないからさ」
「真三一人でもなんとかなるでしょ。姿を変えたり、ネットバンキングの残高いじれたりするんだし」
「私たちが相手をしているのが地球人だけならいいんだけどね。私たち以外の宇宙人も恐らく
私はしぶしぶ同意するしかなかった。
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