第12話 どーも、神龍です

前回のあらすじ


主人公 鍛冶屋で剣を見る


神龍さん暴走 



本文



どーも、色々あって神龍と戦闘することになったオッサンです。ユリさんごと神龍を殺す覚悟を決め、ゴウケツとコッケンを床に捨て店頭に飾ってあるガンツさんが作った剣を握り神龍に向き合う。


「あら、その剣で大丈夫かしら? すぐ壊れちゃうわ」


ふぅー、はぁー、もちろん剣の性能に差があることは何となく分かる。でもゴウケツとコッケンを手にしてしまったらもう手放すことが出来ないだろう。


神龍が一振りするだけで、風が舞い血の色をした魔力の様なもの吹き荒れる。


「おい! ケン坊! オメェ、その剣じゃ死ぬぞ!」


うるさい、うるさい。さっきからこの状況がウザい。俺は身体能力向上スキルを発動させ、神龍に向かって突進する。


「遅いわよ、ケンさん。別に私たちは無理に世界を変えてほしいとは思っていないの。ただ、貴方達ならきっと変えてくれるような気がして期待しているのよ」


チッ、剣を弾かれた際に刀身が砕ける。腰に掛けている剣を抜き、横薙ぎする。それも塞がれ刀身が砕ける。俺は更に身体能力向上スキルを重ねかけ、短剣で斬りかかる。


「少しはまともになったかしら。でも、まだ遅いわ」


これも弾かれ武器が破壊される。なるほど...

神龍から距離をとり、再度展示されていた剣を抜き取り構える。


「何度やっても同じよ。それでもまだ挑むつもり?」


「知っているか? 俺の世界にこんな言葉がある」


俺は神龍との間合いを詰め剣を降り下ろす。結果は同じ、破壊されるだけ...ではない神龍に乗っ取られているユリさんの身体に近付く。


「つかまえ...た」


赤い刀身が腹を貫いているが、構わず心臓に向かって指を立て手を突き出す。


「肉を切らせて骨を断つ」


刀身が腹から抜かれたがその隙に剣を持つ肩に...

回避のためか、血の様に真っ赤な魔力が爆ぜる。俺は、壁まで吹っ飛ばされ激突する。


「かはっ、意地になるのはもうやめだ。確実にお前を殺す」


俺が吹き飛ばされた壁の付近には一緒に吹き飛んだゴウケツとコッケンがある。右手にゴウケツ、左手にコッケンを握り立ち上がる。


「ごちゃごちゃ考えるのはやめだ。おい、もう1人の神龍、お前の力を貸せ」


『すまない、嫁が暴走してしまって。我の力を少し貸し与えるから暴走を止めてくれまいか?』


「そんなのもう関係ないね、俺の血だ、たくさんやるからさっさと契約しろ」


『...。お主の嫁じゃないのか? 良いのか?』


「あれは、もう知らないやつだ。それに嫁ではない。はや...!」


神龍から先に攻撃を仕掛けにきた。瞬時にゴウケツで剣を受け止め、左足で神龍の腹を蹴り飛ばす。


「中々の反応速度だわ。それに先程攻撃はとても良かった...」


「契約かんりょうっ!!!」

『契約完了』


左手の持つコッケンからドス黒い魔力が溢れ出す中、神龍に黒い刀身を突き出す。


「ラァッ!!」


神龍に乗っ取られているユリさんの身体だから動体視力が向上したとしても身体能力が劇的に上がることはない。先程の無謀な攻撃は、ちゃんと考えての攻撃だ。首を刎ねるつもりで横薙ぎした剣は避けられ肩のあたりを斬る。


「次は、首を...」


血を流しすぎた、足に力が入らなくなり倒れ込む俺。


「ちくしょうが...覚えていろ、お前たち神龍はこの俺が絶対に殺してやる!」


『クッアハハハハっ、我たちを殺す? 大きく出たな若造よ。その時を楽しみに待っておるぞ』


ユリさんも地面に倒れ伏せて、自分で治癒の魔法で傷を癒やしている。


「ユリさんか?」


「はい、ケンさん。神龍が私の身体を限界まで行使したのでボロボロです」


「その剣さっさと捨てなさい。それは君が持ってはいけないものです」


「まあ、ケンさんったら、冗談がお上手ですね。この剣の元になっている神龍さんとお話ししました。とても共感できる女性でしたよ?」


「ガンツのジジイ、ユリさんの剣を取り上げてくれ」


「そいつぁ、できねぇ相談だなっ! いやー、イイもん見せてもらったわっ!ガハハハ」


俺は何度も治癒を繰り返し発動させて身体を癒す。

店の中は酷い有り様なのに、なぜこのジジイは笑ってやがる? きっと、頭のネジが外れているんだな。


「おい、ジジイ。俺はこの店の弁償はしないぞあと、風呂の用意をしろ」


「別に弁償せんでもいいわ、ケン坊よ。その剣はくれてやる。大事に扱えよ!それと風呂なんてもんない、樽に水が汲んであるから、2人ともそれで血を流せ」


ようやく身体に力が入るようになって立ち上がる。貧血で頭がくらくらするわ。


「先にユリさん、血を流してきて。俺はジジイと話があるから」


「分かりました、お先に失礼します」


「それで?オレに何が聞きたい?」


「あんた何者?」


「ガハハハハっ。剣のことを聞かれると思っていたわッ! オレは、この世界で一番の鍛治士の弟子だった男だ」


「そうか、そうだよな。世の中狭いもんだなぁ」


「ああ、全くだ。ほれ、上級ポーションだ。その腹をさっさと治せ。イイもん見せてもらった駄賃だ。血を流したらさっさと店から出て行け。それとオメェらに防具は足枷にしかならんから売らんぞ」


「え? そうなの? いや、あるだろうなんか」


「防具は確かに身体を守るもんでもあるが、その反面重量が加算されて速さが失われる。魔法の道具で気休め程度の障壁くらいにしとけぇ」


「ケンさん、次どうぞ。ガンツさん、お水ありがとうございました」


「嬢ちゃんは礼儀正しいナぁ、おい? ケン坊も年上には敬意を持って接しろよっ!」


「それは、誠に申し訳ありません。以後気をつけます故、お許し頂けませんでしょうか?」


「気持ち悪りぃ、ケン坊はそのままでいいわッ」


その場を後にして、上級ポーションを飲み干し貫通した腹を見るとしっかり穴が塞がっていた。全身血だらけなので身体を水で洗い流す。傷みがあまりない...でも血が足りない。綺麗になった身体から水を布で拭き、新しい服に着替える。


「お待たせ、ジジイ、水ありがとう。あんたはこれからどうするだ?」


「オレか? オメェたちの活躍を祈って自然豊かな場所で隠居生活する予定だ。もう、オレは武器を作らねぇよ」


「そうか、詫び賃の白金貨150枚だ。これくらいあれば余裕で暮らせるだろ?」


「ふん、勝手にせい。そこら辺に転がっている武器や防具は好きに持っていけ。処分するよりオメェたち使われた方がこいつらぁも嬉しいだろよ」


「私からも白金貨150枚置いていきます。好きに使って下さい」


俺たちは武器や防具を全てマジックバックに入れて店を出る。本当に全部持って行くとはあのジジイも思ってなかったのだろう。ぷぷぷ、唖然とした顔が笑える。


「さて、俺たちはとりあえずご飯食べて宿に戻ろうか」


「はい、ご飯食べてお湯に浸かってゆっくりしましょう」


食料調達は明日だな。なんでこうも濃い日が続くんだよ。明日は平和でありますように...




後書き


次回 事情聴取

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