第20話 悪夢
「いい思いしていたな。先生からも優しくしてもらえて」
思わずハッとなった。
あのときの刑務官だった。
僕は手をグッと握りしめた。
イヤだ、イヤだ。
そんなことをされたくない。
あんなに怖くなかったのに息の音が普通じゃない。
「……おい、そんな目で見るな。せっかくのムードが台無しじゃないか? 君には大勢のファンがいるんだよ、特に女から。暗い性を持つ女にとって君はアイドルさ」
自分の顔の良し悪しなんて知ったことじゃない。
ファン、なんてことをするんだ!
こんな僕でも腹が立つ。
とんでもない。
よりによって人を殺めた少年を崇拝する奴の気持ちは僕には永遠にわからない。
わかりたくもい。知りたくもない。
目の奥がちかちかする。
針でずかずかと刺しているように感じる。
言い逃れはできない。
声が錆びつくまで叫んでも罪は消えない。
「いいねぇ、いいねぇ」
男は僕の手を強く握った。
男は前かがみになる。
まばたきの回数がだんだん増えてくる。
苦しくはない。
目を閉じたら感覚がなくなってしまう。
開けたらそれはそれで、地獄を見なくちゃいけない。
声も出ない、と僕は思った。
唇がブルブルと震える。
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