第14話 痛み


 僕の将来を願っている、とわかって肌を切り裂きたいくらいだった。


 口から飛び出してしまいそうになるのを深く、深く我慢しながら僕はこらえる。


 ――お前らは人の幸せを考えたことがあるのか? と責めたかった。


 何てことをしてくれたんだ、と思わず怒鳴りそうになった。


 


 あそこで僕は死んだんだ。


 たとえ、同情される余地があっても罪は罪なのにこいつらはそれをパーにしてしまったんだ。


 唇を噛みそうになって、僕は頭を思いきり叩いた。


 パキンとかなり強い力で叩く。


 叩いて、叩いて、叩きまくった。


 


 頭蓋骨が軋むような音がする。


 頭は硬いから、なかなか痛くならない。


 手のひらから、虫歯が沁みるような痛みが広がっていく。


 ダメだ。


 まだしなくちゃ。


 そのうち、みんなが僕の方をじろじろとうかがい始めた。



「もうすぐ夕食だよ。ほら、配膳が来たよ」


 医務官はすぐにそっぽを向いて、どこかへ行ってしまった。


 手のうちが熱くなり、見てみたら、真ん中が赤くなっていた。


 腕も肩も痛くなってきた。


 白いドアから鍵が開かれて、食事を運ぶワゴンが入り、女性看護師が子どもたちにおぼんを渡していく。


 この子たちも、よほどの重罪を犯したに違いない。


 中には小さな女の子もいた。


 怖い、と思った。


 こんな僕でも怖い、と思った。


 僕だって人のことは言えない。


「知らない」


 

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