第11話 罪という傷跡
ここまで叩けば、頭が割れてしまって、これ以上、ひどいことをしなくて済む、というバカなことも考えた。
頭がくらくらし始めた。
これくらい僕には必要だ。
そう思って頭を壁に押しつけた。
それを4回もした。
これくらいじゃ、足りない。
僕は手で涙を消した。
「僕なんか、死んでしまえっ」
死んで生まれたかった。
別に大げさな冗談ではなく生まれてきてはいけない子どもはこの世に存在する。
例えば、僕みたいな人間とか。
「死んでしまえっ!」
死を弔う、子どもにもなれなかった僕はしぶとく生き続けた。
僕は自分の中の悪を壊さなければならない。
「いつも暴力的になるんだね。僕は」
それに遭うとき、それをとらえるとき、それに襲われるとき。
腸の底から煮えくり返る。
咽喉の奥から裂かれた肉片が飛び出てきそうになるまで、僕は苦しまなければいけない。
くくる、くくられ、くくる、くくられ、くくれ、くくる、くくられる。
僕は罪からは逃れられない。
僕は死ななければいけない。
僕は死ななければいけない。
断頭台の上に立たなければいけない。
金属が僕の首筋に軽く触れてから、正義にこう言いたいんだ。
「僕を誰か、ねっ、……早く殺してよ」
声が詰まる。咽喉の奥が爛れている気がする。
あの刑務官がまた来てくれたらいいな、と思った。
あの刑務官がたくさん塩を塗ってくれるといい。
罪という傷跡から正義という塩を塗りたくれば。
ズーンとめまいがし、僕は倒れこむ。
死んだ女の子たちはこの痛みさえも味わうことができないのだから、僕はまだ痛みを感じられるだけ幸せなんだ、我慢しろ、と唱えた。
コトコトと音が鳴った。
僕はゆっくりと足音に耳を澄ました。
「誰?」
来る。
誰か来る。
目をぱちぱちさせながら、僕は顔を持ち上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます