第9話 子どもは泣きません、子どもは泣かない


 幸せな子どもと不幸の子どもをどちらかを殺さなければいけないときに、多くの人は幸せな子どもを守る。


 不幸の子どもをそっと闇に葬る。


 幸せな子どもは生きているだけで尊くて、不幸の子どもは生きているだけで邪魔で、社会のゴミ。


 社会のお金をたくさん使わせる、動くゴミ。


 生ゴミよりもひどいゴミ。


 それが僕だ。



「子どもは泣きません。子どもは泣かない」


 殺すとはいかなくても、不幸の子どもを蔑ろにさせることは多いにできる。


 命は地球よりも重い、とスローガンを唱えている人がたまにいるけれど、実際はそうじゃない。



「子どもは泣きません。子どもは泣かない」


 不幸の子どもは生まれてきただけでみじめで、存在することだけで罪をまき散らしているからだ。


 世間の人はみんなそうやって叫んでいる。


 僕は圧倒的に不幸の子どもだった、とは思える。


 不幸の子どもの中の不幸な子ども。



「コドモハはナキマセン。コドモハ……、ナカナイ」


 未来なんて来なければいい。


 未来で待っているの地獄しかない。


 


 勘だけれども、僕という人間は今まで涙さえも流したことさえもない人間だった、と思う。


 けど、そんな僕にも幸せが残っている。


 もう少し、さっきの刑務官とのじゃれ合いを楽しめば良かったかな、と思った。


 肌のふれあいもここでは貴重なのだから。


「……痛いっ」

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