第8話 世界が年老いた


 自分が何者かも見定めていないんだ。


 自分がとてつもない過ちを犯したことも実感できなかった。


 記憶がほぼないのにどうしたら、罪を贖うことができるのか、見当もつかない。


 足をぶらぶらさせながら、僕は錆びついた天井を見上げた。


 


 光はまばらで、ここは遥か宇宙の果てのように暗い。


 罪のない誰かを殺したから僕はここにいる。


 だから、死ぬまでここにいないといけない。


 それくらい僕は大罪を犯したんだ。


 もういい。


 じっと宙を見て息を吸うだけでもいい。



 世界が年老いた。


 もう、若さという鎧を身に纏う必要がなくなった。


 


 でも、それは嘘だ。


 真っ赤な嘘だ。


 いつまでたっても、死の淵は遠い。


 身体が完全に老いるまで、あと何十年もここにいないといけない。


 鏡がないから自分が少年であるか疑問だったけれども、片方の手で頬を触ってみると、まだみずみずしくスベスベしていた。


 痛い、と唱えてみる。甲高く、からい声だ。


 それはまだ声変わりをしたばかりの幼い少年の声だった。


 


 僕はまだ子どもなのか。


 それも、人生の半分の、その半分も生きていない、少年。


 どうせ、僕は罪を犯したんだ。


 不幸な子ども。


 それが僕。

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