第8話 世界が年老いた
自分が何者かも見定めていないんだ。
自分がとてつもない過ちを犯したことも実感できなかった。
記憶がほぼないのにどうしたら、罪を贖うことができるのか、見当もつかない。
足をぶらぶらさせながら、僕は錆びついた天井を見上げた。
光はまばらで、ここは遥か宇宙の果てのように暗い。
罪のない誰かを殺したから僕はここにいる。
だから、死ぬまでここにいないといけない。
それくらい僕は大罪を犯したんだ。
もういい。
じっと宙を見て息を吸うだけでもいい。
世界が年老いた。
もう、若さという鎧を身に纏う必要がなくなった。
でも、それは嘘だ。
真っ赤な嘘だ。
いつまでたっても、死の淵は遠い。
身体が完全に老いるまで、あと何十年もここにいないといけない。
鏡がないから自分が少年であるか疑問だったけれども、片方の手で頬を触ってみると、まだみずみずしくスベスベしていた。
痛い、と唱えてみる。甲高く、からい声だ。
それはまだ声変わりをしたばかりの幼い少年の声だった。
僕はまだ子どもなのか。
それも、人生の半分の、その半分も生きていない、少年。
どうせ、僕は罪を犯したんだ。
不幸な子ども。
それが僕。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます