第5話 記憶を探る少年
男は立ったまま、言い切った。僕はその表情の細部までよくわかった。
「君は14歳だから死刑にはならずには済んだ。が、世論では君のようなケースに対して厳罰化を、という声が多く、つい前に少年法が改正になったばかりだったんだよ。君は一生刑務所に配置されることが決まったのさ。改正する前だったら出られたんだが、――残念だったな」
自分の年齢がいくつなのか、どうだって良かった。
悪い予感がする。
こんな状況で、14年しか生きていない、子どもがいるということはよほどのことがあったんだろう。
僕は返事もしなかった。
男は痺れを切らしたのか、手を持ち上げた。頭の上に痛みを感じる。
キーン、と音が頭の中に響いた。
「しょうもねえやつだな。ガキのくせに大人を見下して。昔なら考えられないな。世も末だよ。……聞いているのか? ええ? 聞いてねえんだな。黙秘でもしたいのか。まあ、お前はどうせ日の下を拝めないんだ。一生ここで過ごすんだよ!」
僕が犯した罪はそんなひどいことだったのか、と思う。
そうじゃないかな、と思っていたところだった。
でも、僕が何という名前で、どこに住んで、誰が親で、どこの学校に通っていたのか、全然思い出せなかった。
ただひとつ覚えているのはあの人との秋の河原での記憶だ。
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