囚人、水底の唄

第4話 鏡の底


 もう長い間、深い夢を見ていたような気がする。


 目がくらくらした。左手はもう長く、鎖とお友達みたいだった。


 水が沁みた石畳みの上に僕はもたれかかっていた。


 ここはどこだろう。こんなところにいるから、何か悪いことをした、ということは見当がついた。


 僕は悪いことをしただろうか。


 いや、していない。


 僕は何にもしていない。


 


 身体を起こし、めまいを鎮めようと頭を振っていると、小さな鉄格子から人影が見えた。


 外から男が入ってくる。その男の目は鋭く貫かれていた。


 まるで矢尻のように。


 その目を見て、何か悪いことをしたんだ、と僕は悟った。


 それも、よほどの大罪を犯したなのだ、と。


 僕はビクッとなって目線を逸らした。



「――君の年齢じゃ、この国ではどこも行くあてはないんだ」


 

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