5.貧乳で貧乏そうだと女として需要が無い?
私は、貧乳だ。アラサーになって、かつて若かった頃のスレンダーさは薄れ、多少肉が付き、少しは膨らみを増した胸だったが、それでも貧乳だった。一方、母には明らかな胸の膨らみがあった。
私には風俗情報誌をくれないのに、母にはくれたという事実に打ちひしがれ、三日間ほど部屋に籠り、うじうじといじけていた。その中で、閃いたのだ。
「そういえば、私って歌舞伎町でキャッチもスカウトもされた事無くない?」
そう、私が感じていた歌舞伎町での物足りなさの正体に、この時ようやく気が付いたのだ。
私は、どんな相手と歌舞伎町を闊歩していても、ホストのキャッチにも居酒屋のキャッチにすら声を掛けられた事が無かった。キャバ嬢にスカウトされた事も無ければ、風俗店からのスカウトに声を掛けられた事も無かった。
「貧乳────全て貧乳が悪いんだ」
キャバ嬢をやる気も、風俗嬢になる気も無かった私だが、声を掛けられなければ掛けられないで寂しさを感じたのだ。『お前に女としての商品価値は無い』と言われているかの様に感じたからだ。また、ホストのキャッチからも声を掛けられないのも不満だった。そんなに私に酒を注ぎたいと思わないのか。
「まさか、貧乏がばれている!?」
もうこうなったら負の思考無限ループだ。私は駆け出しの作曲家。とてもじゃないがお金には余裕が無い人生だった。それを見透かされているかのように、『こいつからは搾り取れないし、売り飛ばす当ても無いな』と言われているかのような出来事だった。
新宿で母に惨敗事件は、私の中にその先もずっとモヤモヤを残すものになった。
しかし、貧乳で貧乏でも、悪い事ばかりではない。メリットもあるのだ。
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