6話 あなただけ見つめてる 楽園への行き方
——夜に咲く花園。
この言葉を頼りに僕はインターネットで調べ尽くした。
〇からのスタートでは無かっただけまだマシだと思う。
その言葉はどこかで聞いたことがあった。
好きな小説の一節だったからだ。
『明星の花』
そんなタイトルだったと思う。
作品の中で明星に咲く花が何を意図しているのか。
それは肉体からの解脱だった。
ある条件を達してしまった主人公が迷い込んだ世界で、一〇〇〇年に一度、満開に咲く場所がある。
そこで偶然、明星の花を見てしまった主人公は肉体と言う檻を飛び出して、アストラル体へと転生する。
アストラル体になった主人公は、誰にも見られないまま自由に世界を見て回り、その世界の真実を知るという物語である。
ある条件を満たして、明星の花を見ることで何かが起きる——。
僕は偶然とは思えなかった。
夜に咲く花園など、現実には無いし、ファンタジーである。
あの天使は、僕の事を知っている?
本棚からその本を取り出す。
そしてページを捲った。
ある条件——それは……勇気のいる選択だった。
だけど、なんでか僕にはやる気しかなかった。
もし今から僕のする行為を聞いて、それを実際行おうとしたとき、傍から見ると、異常者にしか見えないだろう。
精神が可笑しくなったか、はたまた人生に絶望したか。
生に飽きてしまったのか、と。
僕は、今からすることはとても嫌いだ。
自ら望んで行うなど、負け犬のやることだ。軸の無い者だ。
そういったニュースを見た時、悲しみと同時に怒りすらも覚える。
天使という存在。
黒い翼を掴んでいた。
それから僕は、僕の見ている物が非日常に変わってしまったのを受け入れたから。
現実では有り得ないことを行うしかない。
待っていては何も来ない。
いつも自分から前へ進まなければ訪れることも訪れないからだ。
非日常の正体を僕は知りたい。
好奇心に勝るものなし。
僕は机の引き出しから、カッターナイフを取り出した。
刃を出し、それをこめかみに沿うように置いた。
そして次の瞬間、僕はこめかみに刃を突き刺した。
激痛が走った途端、目の前が真っ暗になった。体が崩れていった感触もあった。
眠るよりも一瞬の出来事だった。
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