第39話
その瞬間、センサーライトがつき、校長と戸田の全裸があらわとなる。
その光景に一瞬言葉を失うが、すぐに「あらぁ? ここの鍵をいつの間に持ち出したんですか? 戸田先生、私と生徒に怒鳴りつけたわりに、色っぽい所もあるんですねぇ」といやみたっぷり。
そんなサヤカに戸田と校長は慌てて服を着て、誤解を解こうとする。
「違うんだっ」
「違う? 自分たちがここでみだらな行為をして、それを生徒達に押し付けてた事が、違う?」
その言葉に、すっかり戸田は言葉を失ってしまっている。
今まで硬い教師という面目を保っていただけに、こんなとこがバレるとどうすればいいのか解からないのだ。
「先生、生徒に謝罪してください? そうすれば、ここは見なかったことにしますから」
サヤカの言葉に、ようやく校長が救われた、という表情で「そうしてくれるか?」と食いついてくる。
「ええ」
頷き、それと同時にりえ達四人が教室へ入ってきた。
「あなたたち!」
戸田が目を見開き、声を上げる。
「謝罪、お願いしますよ?」
生徒四人に見下されたまま、校長と戸田は謝罪することとなったのだった。
☆☆☆
その日から、地下室は使用禁止になり、すぐに地下室取り壊しの作業が始まった。
教室で授業を聞きながら、りえはぼんやりと作業の音に耳を傾ける。
校長と戸田の事は秘密になったままだが、それでもなんとなく二人の態度が変わったことと、急に地下室がなくなることに疑問を覚えている生徒はいた。
「うるさいなぁ」
担任の川村が、教卓に立ちながら工事の音に顔をしかめる。
りえは、ソラと目を見交わし、軽く微笑む。
地下室がなくなれば、本当に母親と妹とは会えなくなる。
なんとなく、そんな気がして、少し寂しい感じもする。
けれど、不意にりえとソラはハッと顔を上げた。
「今……」
りえが呟く。
「うん、聞こえた」
ソラも、頷く。
「バイバイ」
そんな、未来の声が、確かに、工事の音と一緒に聞こえてきたのだ。
「バイバイ」
りえは涙をこらえながら、一言返事をしたのだった……。
END
赤い扉 西羽咲 花月 @katsuki03
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