第17話

本当はノートなんかどうでもよかったソラだが、安田の必死ぶりを見て気になってきた。



「なんでもないですってば!」



そう言う安田を尻目に、ソラはパラパラとノートをめくり始めた。



「ただの理科のノートじゃない」



つまらなそうにそう呟き、あるページで手が止まった。



「ない、これ……」



大きく書かれた女の子の絵に、ソラが唖然とする。



「返してくださいよ!」



ようやく、安田がソラの手からノートを取り返す。



「待って、さっきの絵ってなに?」



「別に、なんでもないですから!」



それだけいい、かけだす安田。



しかし、ソラはすぐにその後を追った。



運動神経なら負けない。



「あんたどこ行くのよ、その絵に関係あること?」



「向井さんには関係ありません」



「待ってよ、私もその子見たことあるんだってば」



「ダメです。危険です!」



二人とも徐々にスピードを上げながら、会話を続ける。



安田の方がすでに息を切らしていて、ソラは「で、なんでそんな絵描いたの?」と聞く。



安田は諦めたように大きく息をつき、「わかりません。なんだか手が勝手に動いた感じで……」と、今度はゆっくり歩き始める。



「なんか、ある感じだよね? 私もりえも国方さんも、みんな同じ女の子を見たりしてる」



「はい……。だから、これから国方さんにこの絵を見せに行くんです」



「国方さん、どこにいるか知ってるの?」



ソラの目が輝く。



「地下室ですよ、あそこに必ず何かがあるって言ってましたから」



「地下室……」



つぶやき、ソラは足を止める。



「どうしました?」



振り向き、首を傾げる安田。



サヤカに、地下室にはいくなと言われたが、国方がいるなら行くしかないだろう。



「ううん」

ソラはそう言い、再び歩き始めた。

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